文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

参考図書紹介:『コピペと言われないレポートの書き方教室』

授業で学生さんに紹介した本についても書いておきます。一冊目は、山口裕之『コピペと言われないレポートの書き方教室』(新曜社、2013)http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1345-7.htm です。STAP細胞に関する嵐のような報道が一段落したころ、「コピペ」がいけないのならいったいどうしたらいいのだという学生さんのニーズにぴったりのこの本が書店に並びました。

この本が他と異なっているのは、まずネットで調べ、それから紙の文献に当たるという現在では一般的なスタイルに対応していることです。レポートの書き方についての本には、ネットを利用する場合を付け足しのように説明しているものがいまだに多くありますが、この本ではWikipediaなどを調べるのが前提になっています。あまりに現在のスタイルに対応していて「携帯電話でレポートを作成するのはやめましょう」とあるのには、ショックを受ける人もいるかもしれませんが。

内容は極めて具体的に、どうしたらコピペにならないかを説明しています。出典の書き方や検索の仕方についても、パソコンの画面を示して説明する親切さ、まさに至れり尽くせりです。

こうして調べた結果を踏まえ、根拠として引用して自分の意見を主張できているのが、則ち「コピペと言われないレポート」なんですね。テーマを絞ってあるので分かりやすいです。

分量も100頁ほどしかないのですぐ読めます。それでも読めないという学生さんは巻末のチェックリストを利用するとよいでしょう。このチェックリスト、本文の対応する頁数があればもっと便利なのですが、役に立ちます。

自分の意見をきちんと表現できるということが、単にレポートを書くだけに留まらず民主主義社会において重要なことなのだというのが、本書の底流をなす著者のメッセージです。そして「おわりにーー民主主義とレポート」では熱いメッセージとなって記されています。この章は、教える側(私もそうですが)にとっては感動的ですが、この本の対象としている読者(コピペの何が悪いのか今ひとつ分かっていないような学生)には唐突で、よくわからないのではないかと思いました。

ところで、なぜコピペレポートというものが生まれるのでしょうか。著者は学生がコピペしてしまうのは、中学校や高校の調べ学習で「引用」と「丸写し」の違いが教育されていないからだと指摘しています。私も多くの学生さんから、本やネットで見つけた何かをそのまま発表するのが調べることだと学んできたと聞きましたので、この仮説は正しいのではないかと思います。(追記:2年前にこのことを書いていました。第13回 高校の国語科の「書く」授業 - 文章表現の授業です )

それに加えて私は、そもそもレポートにふさわしい文章を書けないからというのが、コピペをしてしまうもう1つの理由だと推測しています。本書では引用について重点を置いているため、文章そのものについてはあまり触れていませんが、たとえば接続詞を使って書くように説明していることなどは、トレーニングの課題に取り入れてみるつもりです。

絵葉書を使った授業のウォーミングアップ

第1回目の絵葉書を使った授業、第1回 正確に伝える - 文章表現の授業です はお勧めです。なかなか盛り上がりますし、何よりこれからの授業の方向性をわかってもらえます。

この授業をするには、数・大きさ・位置の要素が同じ絵葉書を数枚集める必要があります。ちょうどよいものが手許にない場合は、インターネット上のパブリックドメインなどで探し、カードを作るのも1つの方法だと思います。

ただ最初から複雑な絵を説明するのが上手くいかないかもしれません。簡単な図形でウォーミングアップをするとこちらの意図が伝わるかと思います。以下のようなものです。

【練習①】
カードに丸・三角・四角が1つずつある絵を描きます。
描けた人から2人組になってください。相手に自分のカードを見せてはいけません。
お互いに自分のカードの絵について説明し、相手の絵を再現しましょう。

「直径5センチの丸、一辺が5センチの正三角形・正四角形」など、図形のおおよその大きさを使用する用紙によって指定しておくとスムースに進みます。

【練習②】
練習①と同じ方法で、丸・三角・四角のどれか1つを大きく描きましょう。

この場合も、一辺の大きさが2倍などと指定するとよいでしょう。

【練習③】
練習②と同じ方法で、丸・三角・四角の数を増やして描きましょう。

この後、絵葉書を用いて同様に行います。練習①~③は口頭で説明し、絵葉書を使うときはブレインストーミングを行って文章でまとめるようにすると、90分で収まります。 

保育士はどんな勉強をしてきたのか――文章表現の技術の視点から――

厚生労働省が保育士の配置基準を緩和し、資格を持たなくても保育できるようにするという12月4日のニュースは、保育士や保育士を目指す学生さんたちにとって衝撃だったと思います。子供の少ない朝夕は保育士2人以上の配置が義務付けられていたのが、改正された来年4月からは保育士1人に加え、無資格の人も保育できるということです。これが認められれば、ずるずると無資格者の保育が行われるようになるかもしれないと危惧します。

保育の仕事は、無資格でも可能なのでしょうか。ここでは、保育士の資格を持っている人が、どのような勉強をしてきたのか、無資格の人とはどこが違うのかをについて触れたいと思います。

私は今年の前期、保育コースの文章表現の授業を担当しました。私が担当した短期大学では前期15回、後期15回の計30回、文章表現の講義があります。後期の講義は専門の先生が担当され、保育の分野に特有の用語や表現を用いるもので、私は前期の基礎を担当しました。

保育士にとって文章を書くのは欠かせない仕事です。たとえば、たいていの保育所では「お便り帳」などと呼ばれているノートが活用されています。保護者と保育士がコミュニケーションを取るための大切なノートです。慌ただしい朝、働く保護者は保育士とゆっくりと話すことができません。そこで簡単な連絡事項や、時には心配事などをノートに書くのです。保育士は保育所にいる間の子供の様子をそのノートを使って伝えます。親の勤務時間や保育士のシフトの関係で、お迎えに行ったときに対応する保育士と、日中ほとんどの時間子供をみていた保育士が別人ということもありますから、このノートの記録は非常に重要なものになります。

そこで基礎の授業では、事実を正確に記述するというトレーニングを徹底して行いました。具体的には、以下の内容をアレンジして繰り返しました。

masudanoriko.hatenablog.com

masudanoriko.hatenablog.com

保育士が保護者に子供の様子について伝えるには、こういった講義を受け、実際に書く訓練をする必要があると考えます。事実と意見を分けて書くという基礎を知らないと、たとえばお昼寝について書く場合、次のように書く可能性があります。

ぐっすりお昼寝しました。

よく眠っていました。

「ぐっすり眠っている」「よく眠っている」というのは『理科系の作文技術』でいうところの「意見」です。その人がそう判断したに過ぎません。このような表現だと、ノートを読んだ保護者が、ぐっすりお昼寝したから少々夜更かししても大丈夫と思って、子供を睡眠不足にさせるかもしれません。

講義を受けて正確な記録文について学んだ保育士なら、「ぐっすり」「よく」などと書くにしても、次のように具体的な表現を続けるでしょう。

一度も途中で目を覚ましませんでした。

ぐずることなく、すぐに眠りました。

同様に、

お友達と喧嘩をしてしまいました。

だけだと心配ですが、

お友達とブロックの取り合いをして、泣いてしまいました。

なら何が起きたのかがわかります。体調が今一つだった日に

熱もなく元気に遊んでいました。

おやつもたくさん食べました。

と書いてあるよりも、

お昼寝の前に熱を測りましたが、36.4度でした。

いつものように園庭を走り回って遊んでいました。

おやつのいちごは4粒全部食べました。

と事実を具体的に書いている方が安心できます。

事実と意見を書き分けることは論理的な文章を書く基礎ですが、私が担当した学生が保育士の資格を取得した場合、90分授業で15回にわたってこういったトレーニングを受けていたことになります。

無資格者の場合、こういった技術を身に付けているかどうかはわかりません。ただ単に子供が好き、保育の仕事がしたい、というだけでは上記のような記録文を書けるかどうかわかりません。厚生労働省の発表では無資格者に研修を受けさせるとありますが、前期だけでも90分15回かけてトレーニングする内容を、何時間の研修で身に付けさせるのか甚だ疑問です。

基礎的な文章表現の技術を身に付けているかどうかという面からも、無資格者の保育が認められることに不安を覚えます。

 

後期第9回 自己アピール文を書く その2

いまどきの大学生が一番書き方を知りたいと思っている文章は何かといえば、就職活動の際に企業へ提出するエントリーシートだということで間違いないでしょう。自己アピール文を書くというテーマの授業で取り上げてほしいという要望が最も多いのは、エントリーシートです。こういうのを書いたのだけど見てもらえませんかと学生さんが持ってくるもので一番多いのも、エントリーシートです。自分の将来に関わるのですから、エントリーシートがきちんと書けるかどうかは切実な問題です。*1

授業では次のような架空のメーカーに応募するエントリーシートを書き、人事課になりきった学生さん数人に面接に進む応募者を選んでもらいました。

菓子メーカー「みかげ」の企画部スタッフに応募するためのエントリーシート(200字)を書く。「みかげ」は従業員数50名で大きな会社とはいえないが、今年で創業60年になる地元の老舗である。「みかげ石」という固焼き煎餅は全国的に有名なヒット商品であり、地元の人たちに手土産としてよく利用されている。新商品の開発に向けて企画部のスタッフを3名募集するという採用情報をホームページに掲載している。

私は就職課の職員でも就活コンサルタントでもありませんが、学生さんのエントリーシートを見ていると、ふだんの文章表現の授業で学んでいることをそのまま生かしてくれればいいのにと思うことが多いです。

まず第1に、見た目は大事です。読み手のことを考えて、読みやすいものにしてほしいと思います。そもそも企業側は膨大な量のエントリーシートを全部読んでいるのか疑問です。読んでもらえないかもしれないと思った方がいいかもしれません。まずは、初見で読む気をなくすようなエントリーシートにならないようにしなければスタートラインに立てません。当たり前のことばかりですが、次のようなことに気を付けて下さい。

  • インターネットのフォームや指定の書式に書き込む場合、字数不足や必要以上の改行で余白が目立つものは、熱意が足りないという印象を与えるので注意。
  • パソコンを使って書類を作る場合、ポイントと字間に注意する。指定がない場合、10.5~12ポイントで、字間はできるだけゼロに近い数字にする。

この字間に無頓着な学生さんはわりと多いのです。どうしてそうなったのか今でも疑問ですが、字間が行間より広いレポートが送られてきたことが何度もありました。あれを読むのはちょっとした拷問です。エントリーシートだったら読んでもらえないでしょう。

  • あらかじめ書式が与えられている場合は罫線などを変更しないようにする。勝手に書式を変更したと受け取られることがある。
  • 手書きの場合、丁寧に見やすく書くことを心がける。文字色の濃さ、文字の大きさや配置などに気を配ろう。

次に、トピックセンテンスを効かせることも大事だと思います。応募者数が数百人数千人になると、おそらくほとんどのエントリーシートはじっくり時間をかけて読まれることはなく、流し読みされるのではないでしょうか。担当者は出だしで次のステップに進める応募者の当たりを付けていたり、出だししか読んでいなかったりする可能性があります。全部を読まなくても内容がわかるような、要約型のトピックセンテンスを作って書くとよいでしょう。数百字の文章の最後まで読んで、最後の行で「いい学生さんだなあ」と思ってもらえる、そういうタイプの文章は避けましょう。

トピックセンテンスについて忘れてしまっている場合は復習します。

第4回 トピックセンテンスを生かして書く - 文章表現の授業です

内容については、限られた字数*2ですから、わかりきっていることは省く方がいいでしょう。例えば次のような文章が全体の2割以上を占めていると、字数がもったいないと思います。

食品関係の仕事をしたいと思い、先日、就職課のパソコンで検索していたところ、貴社が社員を応募しているのを拝見しました。

こんな私ですが、入社しましたらきっとお役に立てると思います。なにとぞ私を選んでくださいますよう、お願い申し上げます。

また、なぜ他ではないそこに応募したのかわかるように書くといいと思います。その店の商品を褒めるのであれば、具体的にどこがいいのか書けば商品をよく理解していることをアピールできるでしょう。例えば、

 貴社の「みかげ石」という固焼き煎餅は全国的に有名なヒット商品で、私も地方を訪れる際に手土産として利用しております。

だと、ほとんど応募する側の情報がありませんが、

貴社の「みかげ石」は、添加物を一切使用せず良質な素材の味が生かされており、安心して手土産として利用しております。

だと、メーカーのこだわりを理解していることがわかります。

自分のことを書く場合も、具体的な例を挙げて書くように心掛けましょう。

私はお菓子が大好きでよく食べているので、新しいお菓子を考える企画の仕事に向いていると思います。

このような文章は誰にでも書けてしまいます。

私はお菓子が大好きで、大学祭では地元のお菓子を網羅した冊子を作成して配布しました。

できるだけ、自分にしか書けない具体的な例を挙げてアピールするようにしましょう。エントリーシートの書き方で、今や一つのパターンになってしまっている次のような書き方があります。

私にはリーダーシップがあります。学生時代はハンドボール部でキャプテンを務め……

これも「リーダーシップがある」具体例として、クラブのキャプテンだったということを書いているのです。

なお、応募先の情報を十分集めておき、会社名・商品名などを書く時は正確に。固有名詞の誤字などは最悪なので、サイトなどで確認して十分注意しましょう。

*1:エントリーシートなるものについてはいろいろ思うところがありますが、そうも言っていられないので粛々と授業をするのであります。

*2:たいてい200~600字の範囲に収まりそうです。

後期第8回 自己アピール文を書く その1

文章表現の授業では、学生さんのニーズに応えて、自己アピール文の書き方を取り上げています。奨学生に応募する書類を書いたり、就職活動のエントリーシートを書いたりする書き方がわからないというわけです。具体的な書き方は専門のスタッフの方がおられるので、授業ではその前段階の基本を押さえます。

こういう書類を抱えた学生さんが相談に来ることがありますが、下書きを見せてもらうといつも驚いてしまいます。いざこういう書類に向かうと、何か不思議な力が働くのでしょうか。何故か今まで授業で学んだことを全く使わないで書いてしまうのです。

授業では、次のような設定で奨学生に応募する文を書く練習をしています。

こども絵本協会の「グリム奨学金」に応募するため、志望理由書(400字)を書く。

こども絵本協会は子供たちに良質な絵本を届けることを目的とする団体で、保育所・幼稚園に絵本を寄付する活動を行っている。この他に、新人絵本作家の登竜門グリム賞を主催しており、その授賞式は毎年テレビニュースでも放送されている。
グリム奨学金はこども絵本協会が経済的に困窮している大学生を支援する制度で、卒業まで月5万円の奨学金が支給される。
応募条件は将来、子供に関わる仕事を志望していることと、保護者の収入が一定金額以下であること。保護者の収入については証明書を提出する。

まず何も説明しないで書いてもらうと、情緒に訴える文章がほとんどになります。「父がリストラされて家計が苦しいです」「母子家庭で母には苦労をかけています」「父が家にお金を入れてくれません」「私はブラックバイトで鬱になりました」……(あくまで文章を書く練習なので、これらが本当のことを書いているとは限りません。)

審査する人の同情を買うと採用されるのでしょうか。「母子家庭で苦労をかけた母に楽をさせてあげたい」という気持ちは立派です。しかしなぜその団体があなたの親孝行に協力する必要があるのでしょう。こういった応募は別に収入証明を出したりしますから、経済状況はそれで把握できます。奨学金は一番可哀想な人に支給されるものではありません。

長年、奨学金申請書類の添削をしてきた方に伺いますと、その学生さんの可能性が伝わる文章を心掛けているそうです。奨学金は支給する団体が望む人材に成長する可能性がある人に支給されるということですね。

まずは、支給する団体について情報を集め、どのような人材を望んでいるのかを考えましょう。そして、自分が将来そういう人物になれるということをアピールするのです。書き方としては、授業でこれまで学んだように、具体的に事実を書くということを心掛けるといいと思います。例として、必ずといっていいほど出てくる次の文を見て下さい。

奨学金を頂いたら、きっと勉強を頑張ります。

頑張るというのは人によって感覚が違いますから、ある人が見てサボっていると思っても、本人は頑張っているのかもしれません。これはいわゆる「事実を表す文」ではありません。

奨学金を頂いたら、現在週5日のアルバイトを3日にできます。空いた時間をピアノのレッスンに当て、保育士としてのスキルを磨くつもりです。

と具体的に書いた方が、奨学金を有効に使うことが伝わるのではないでしょうか。

この他に、内容ごとに段落を分け、トピックセンテンスを生かして書くのはもちろんです。応募書類が殺到したとき、最後まで読まないと内容がわからない文章は損をします。自己アピール文の場合も、次の基本を忘れないようにしてください。

  1. 具体的に事実を書く
  2. 内容事に段落に分ける
  3. トピックセンテンスを効かせて書く

後期第7回 プロフィールを作る

しばらく書いていませんでした。読んでくださっていた方すみません。

というわけで、授業でプロフィールを作ります。

プロフィールはある日突然必要になります。私の場合初めて「プロフィール送って下さい」と言われたのは講演をしたときで、チラシに掲載されるということでした。

もちろん自分のプロフィールなど考えたこともありません。自分が講演をするということ自体に舞い上がっている状態です。ごく単純なものを書くのにずいぶん時間がかかってしまいました。しかも妙に力の入ったのを作ったため、当日は一部省略されました。

学生さんからよくプロフィールなんて必要ないなどという声が返ってくるのですが、だいたいでいいので、あらかじめ作っておくと役立つと思います。

ついでに写真も用意しておくと、いざ必要になったときにニキビが酷くなってる……などということがなくていいですよ。

また、プロフィールを作ることを通して、自分がこれまでどんなことをしてきたのか、何が得意で何が好きなのか、人にどのように見られたいのかということを、改めて考えることができます。

そのようなわけで、次の3通りのプロフィールを作ります。

  1. 履歴を軸にした短いもの
  2. 自分の作品や仕事をアピールする長めのもの
  3. 自分のキャッチフレーズ

1は、例えば神戸市長の場合、公式サイトに次のようなプロフィールが載っています。

久元喜造プロフィール

ほとんど履歴書ですが、学生さんの場合は「○○大学○○学部入学」「在学中」などと書けばいいですね。このタイプはすぐできます。

2はもう少し自分の特技や趣味をアピールしたいという場合です。もし時間に余裕があれば、プロフィールをネットや雑誌などで集めてみると、上手いプロフィールはどのようなものかが理解しやすいと思います。

例えば、Amazon著者ページはなかなか参考になります。香山リカのページを見てみましょう。

香山リカ

1960年札幌市生まれ。東京医科大学卒業。精神科医として病院での診察に携わりながら、立教大学現代心理学部映像身体学科教授として教壇にも立つ。豊富な臨床経験を活かし、現代人の心の問題を鋭く分析し、きめ細かな解決策を提示する。ほかにも、政治・社会批評、サブカルチャー批評、皇室問題から趣味のプロレスに関する批評まで、幅広いジャンルで活躍する。事務所では住み着いたノラ猫1匹、自宅では犬1匹と猫5匹と同居。

  • 出身地
  • 学歴

という履歴書に書く情報をきちんと書き、

  • 仕事内容(専門)
  • 仕事内容(守備範囲。こんなこともできるとアピールする。)

と続きます。

専門の精神科医の仕事については「豊富な臨床経験」「現代人の心の問題を鋭く分析」「きめ細かな解決策を提示」とアピールし、その上で、「政治・社会批評、サブカルチャー批評、皇室問題から趣味のプロレスに関する批評」と仕事ができる守備範囲を示しています。具体的なのでわかりやすくなっています。

それだけでなく、最後に

  • プライベート

について一言書き、親しみを感じさせることも忘れません。

この2のタイプでは就活の自己アピールも視野に入れて書くといいでしょう。また将来自分はこうありたいという未来のプロフィールを作るのもアリです。

3の自分のキャッチフレーズは、選挙に出るのをイメージして自分のアピールポイントを一言で表現してもらいます。これはなかなか気恥ずかしくて難しいようなので、友達同士で作るのもいいでしょう。

そうです、プロフィールなど自己アピールのための文章は気恥ずかしくて書きにくいものです。学生さんに香山リカは自分で「鋭く分析」や「幅広いジャンルで活躍」と書いてるんですかと質問されました。わかりませんが、少なくとも下書きは自分で書いていると思います。私も自己アピール文は苦手です。しかし、こういう気恥ずかしさを乗り越えて仕事をするのが、大人になるということではないかしら……

*1

*1:今回の内容は個人情報なので、外部に漏らさないのはもちろんですが、書きたくない学生さんには架空のプロフィールを書いてもらいます。授業ではあくまで書き方の練習をするのが目的です。

わかりにくい文章のサンプルを集める その3

わかりにくい文章について、なぜわかりにくいのか考え、わかりやすくなるように書き直す授業は、わかりやすい文章を書く上で効果があると実感しているのですが、教材を用意するのが意外と難しいです。

一昔前は学生さんの書いたものを取り上げてみんなで直すということもありましたが、現在は行っていません。当時ももちろん匿名にしたり一部加工したりして気を配っていましたが……。しかし自分や友人の書いたものをみんなで直すというのは、添削された自分の課題に目を通すよりずっと効果的なので、学生さんやクラスの雰囲気により可能なら行いたいところです。

 わかりにくい文章(ここでは「事実を表す文」になっていない表現を含む文章を指します)のサンプルとして、これまでに当ブログでは

わかりにくい文章のサンプルを集める - 文章表現の授業です で選挙の立候補者のチラシを、

わかりにくい文章のサンプルを集める その2 - 文章表現の授業です でネットショッピングの文章を挙げました。

インターネット上にある、書き慣れていない人の文章や、プロに依頼していないと思われる広告のチラシなどは格好の教材です。こういったものを含め、身の回りでわかりにくい文章を見つけたら報告するという課題を出したこともあります。実物やコピー、プリントアウトしたもの、外出先で撮った写真などの形で提出してもらいました。

しかし自分の書いたものが「わかりにくい文章」の教材にされるのは誰にとってもあまりうれしくないことでしょうし、直されるのも大きなお世話でしょうから、取り扱いには注意が必要だと思います。できれば、こういった文章をアレンジして練習問題を作成するのが理想でしょう。

Amazon.co.jp: 「分かりやすい表現」の技術―意図を正しく伝えるための16のルール (ブルーバックス): 藤沢 晃治: 本

には、身の回りに溢れるわかりにくい表現をわかりやすく書き直した「改善例」が掲載されていて、参考になります。

身の回りにあるわかりにくい表現で、何度か授業で取り上げたものに郵便局の不在票があります。個人商店は避けますが、郵便局のように公的な機関のものなら教材として問題ないだろうと判断してのことです(一度学生さんの中に郵便局の関係者がいて気まずい思いをしたことがありました……)。これについてはわかりにくいと感じる人が多いようで、「郵便局 再配達 わかりにくい」で検索するとたくさんの記事がhitします。授業では

高齢者が「郵便局再配達依頼」が出来ないと泣いていたので検証してみた:Birth of Blues

を参考にしました。郵便局の不在票もマイナーチェンジしているので、私は授業用に最新のものを用意しています。