文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

学園祭に出店するための企画書

野田尚史・森口稔『日本語を書くトレーニング』は文章表現の授業の定番テキストです。今まで複数の非常勤先でこのテキストが教科書や参考文献に指定されていました。このテキストの特徴は、なんといっても時代に合ったトピックだと思います(拙著の練習問題・課題の作り方もこのテキストの影響を受けています)。私は初版から使用していますが、古く感じていたトピックも第2版では時代に合ったものに変更されています。版の分からない古本をアプリなどで購入するのではなく、新刊を購入するのをオススメします。

さて、この本にはトレーニング9「企画や提案を出す」に「学園祭での韓国風お好み焼き屋の企画書」という、いまどきのトピックが取りあげられています。

学園祭では大学から補助金が出ることが多いものですが、補助金を受け取るにはそのための書類を書かなければなりません。与えられたフォームに必要事項を書き込むだけの簡単なところもありますが、企画書と呼べる書類を要求されるところでは、どう書いたらいいのか相談されることがあります。今年度は学園祭が復活することを願って、学園祭にサークルで屋台を出店するための企画書の書き方について、気の付いたところを書いておきます。

 

まず書式について。企画書の書き方については、テンプレートが充実していて、ネット上にも無料のものがたくさんあります。たいてい、

  1. 現状分析
  2. 目的・目標
  3. 内容
  4. 予算
  5. スケジュール

というものです。もう少し詳しくなるとこんな感じ。

    1.現状分析
    2.企画の概要
    3.内容

       3-1.ターゲット
       3-2.コンセプト
       3-3.売り上げ目標
    4.予算
 5.スケジュール

 レイアウトはこういったものを参考にするとよいでしょう。慣れないうちはそのまま使っても悪くないですが、使いやすいものは当然使う人が多いので、みんなと一緒になりがちです。慣れてきたら、アレンジしたり、自分で一から作ってみるのもいいですね。

ちなみに私は授業ではGoogleスプレッドシートのテンプレートを使って説明しました。

www.google.com

こういったテンプレートのほとんどは、ビジネスの企画書を念頭に置いて作られていますが、内容については、ビジネスの企画書と、学園祭の企画書では大きく異なるところがあります。ビジネスの企画書では何よりも利益が出るということを重視しますが、学園祭の企画書では必ずしもそうではないという点です。大学は、屋台が収益を上げることではなく、その企画を通じて学生が何かを学んで成長すること、つまり(企画書をきちんと書けるようになってほしいというのもそれに含まれますが)、企画を立てて実行するという経験をして成長することを期待しているのだと思います。

ですから、ビジネスの企画書では利益を出すということが第1の目的になりますが、学園祭の企画書で「昨年度まではこういう理由で売り上げが伸びなかった! そこで私たちはこういう企画で売り上げを伸ばして利益を上げたい!」と書くのはあまり求められてなさそうです。補助金の概要をよく読んで、何を求められているのかを理解し、反映させて書きましょう。たとえばこんなのはどうでしょうか。

  • 学園祭を盛り上げたい。
  • 話題になって、もっとこの大学を知ってほしい。
  • 近隣住民に楽しんでもらい、大学に親しみを持ってほしい。
  • 高校生に楽しんでもらい、私たちの後輩になりたいという気持ちになってほしい。

このように、まずは目的をはっきりさせましょう。それによって、どのような人たちをターゲットに販売するのかもはっきりしてきます。

 

次に、どのような屋台にするのかを書きます。重要なことは、こんな屋台を出したいなという夢物語ではなく、実行可能な内容を書くことです。そのためには、できるだけ具体的に書く必要があります。

例えば屋台で出す料理については次のようなことを書くといいでしょう。

  • 商品のイメージ写真やイラスト
  • 作り方
  • 作るために必要な道具、機材。どこで調達するか。レンタルか。
  • 材料。どのくらいの量か。どこで購入するか。

屋台その物のしつらえについてもできるだけ具体的に書きましょう。

  • 屋台のイメージイラスト。
  • どのように用意するか。設置はどうするか。
  • 飾り付けはどうするか。
  • 音楽を流すなら機材はどうするか。曲名。
  • 大学構内のどこに設置するか。地図。

その他にも、

  • 広告のチラシのサンプル。何枚作るか、どこで配布するか。
  • スタッフのお揃いのTシャツを作る。デザインサンプル。

など、具体的にイメージできるように書いてください。

 

具体的にどのような屋台にするのかが決まったら、実現可能であることをアピールします。

  • 予算。材料費やレンタルの費用など、できるだけ詳しく。
  • 売り上げ目標。今まで出店したことがあれば、それを元に予想する。

企業ではないから利益を上げるのが第一の目標ではないとはいえ、赤字になるのは避けたいです。お金関係は予算を立てて、誰が責任を持って管理するのかもはっきりさせておきましょう。

  • 学園祭当日までのスケジュール
  • 参加する人たちの名簿、それぞれの担当する役割。

とにかく具体的に、補助金さえ出せばこのサークルはもう明日にでも出店できるな……と思わせるほど具体的に書きましょう。

 

それと同時に、心配の種がないようにしましょう。学園祭で食べ物の屋台を出す場合、心配になるのは食中毒です。アレルギーについても気を配る必要がありますね。また、火の元についてや、消毒など感染対策がきちんとされているかも気になります。

  • 「180度で3分焼く」など、高温で調理する作り方を詳しく書くことで、食中毒の心配がないことをアピール。
  • チラシに原材料を公開、アレルギーマークのプレートを表示するなどアレルギー対策。
  • アルコール消毒のスプレーを設置。テーブルはお客さん毎に消毒。
  • 火の元は調理担当者だけでなく複数のスタッフで確認する。

このサークルなら安心して任せられると思ってもらえるように、不安材料を潰していきましょう。

 

……と、こんな感じでしょうか。分量はA4で1~2枚のところが多いようです。今年の秋は学園祭が復活して、おいしい屋台を出せますように!