大学でレポートを書くとき、仕事の書類を作成するとき、横書きにすることがほとんどです。メールやブログも一般的には横書きで表示されています。
しかし、高校までの作文では縦書きで書くことが多いようです。そのため、入学して間もない大学生は横書きで文章を書くのに慣れていません。慣れていないのにも関わらず、日本語を横書きで書くための決まりについて取りあげている文章表現の本はあまりありません。縦の物を横にするだけの簡単な作業だと思われているのでしょうか。
日本語を横書きで書くときに問題となるのは句読点、カギ括弧、数字です。
横書きに書かれた日本語の句読点については、英語のコンマとピリオド( , .)、英語のコンマと縦書きの読点( , 。)、縦書きの句読点( 、。)の3通りが見られます。どの組み合わせを使うべきか、国による書類では、文部省教科書局調査課国語調査室『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕案』(昭和21年)、『国語の書き表わし方』の付録『横書きの場合の書き方』(昭和25年)など、すべてピリオドと句点の組み合わせ( ,。)になっています。
読点の代わりにコンマを使ったら、横書きであっても日本語だから読点を使うべきだと注意された話を聞いたことがありますが、国としてはコンマと句点の組み合わせを使うのを規範としているわけです。
では、横書きでは3通りのどの組み合わせの句読点を使えばいいのでしょうか。個人的な書き物ではもちろん好きにすればいいと思いますが、人に読んでもらうもの、例えば大学のレポートは、理系はコンマとピリオドを使うことが多いなど、その分野の習慣に従えばよいでしょう。
括弧については、日本語の句読点をそのまま使う場合は括弧もそのまま(「」『』)、コンマとピリオドを使う場合は英語の引用符( “ ” )を使えばいいでしょう。
次に数字についてですが、横書きでは基本的に算用数字(アラビア数字)を使いましょう。パソコンを使って書く場合、そのままだと半角設定(1マスに2文字)になっていることがほとんどです。桁数が多いと全角(1マスに1文字)だと間延びして見えますが、これも読んでもらう人や提出先に合わせるとよいでしょう。
ただ、決まった言いまわしに出てくる数字は漢数字にします。
患者さんと二人三脚で頑張ります。
この段階ではプロジェクトは五里霧中だった。
こういった場合、「2人3脚」「5里霧中」と書くと、まるで「3人4脚」や「10里霧中」があるかのようで、おかしいことになります。算用数字で書き表すとデータとしてとらえてしまうからでしょう。
算用数字で書くか、漢数字で書くかが微妙な場合もあります。
第二次世界大戦 第2次世界大戦
一人で暮らしている 1人で暮らしている
「第二次世界大戦」のような歴史的な出来事は漢数字で書くことが多いようです。算用数字で書くと「第n次世界大戦」、つまり「第3次世界大戦」「第10次世界大戦」……があるかのような印象を与えてしまいます。
「一人」はデータとしての1、つまり2や10に置き換わる可能性がある文脈では算用数字の1が適しているでしょう。
こうした意味のある書き分け以外では、算用数字に統一して、1つの文章の中に漢数字と算用数字が混在するのを避けるようにしましょう。
【参考】
横書き句読点の謎 渡部 善隆
http://ri2t.kyushu-u.ac.jp/~watanabe/RESERCH/MANUSCRIPT/OTHERS/YOKO/ten.pdf
尾名池誠『横書き登場―日本語表記の近代』岩波新書、岩波書店、2003