文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

自己紹介を作る

 新年度が始まって自己紹介をする機会も多いことと思います。文章表現の課題でも自己紹介はよく取りあげられます。自己紹介の文章を書くことは、プロフィールや自己アピール文を書くウォーミングアップにもなります。

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 どのような自己紹介がいいのかというと、正しい一つの答があるわけではありません。自己紹介をする場によって、ふさわしいものは違ってくるからです。あまり自分のことは話さず控えめにしている方がいいこともあるし、相手との距離を一気に縮めに行くのがいいこともあります。すべての文章に共通することですが、聞く人・読む人の立場になって、何が求められているかを判断しなければならないのが、難しいところです。

 しかし、どんな場面でも、自己紹介に必ず必要なものというのは共通しています。自己紹介を何のためにするのかというと、大きく2つの理由があると考えられます。

  1. 自分の情報を相手に伝えるため
  2. 相手とこれから人間関係を築いていくため

 1.で最も重要なのは名前でしょう。どんなにうまい自己紹介でも、名前を覚えてもらえなかったら意味がありません。名前こそ、自己紹介に最も必要な情報です。フルネームでしっかり伝えましょう。口頭で自己紹介するときは、少し話すスピードを落として聞き取ってもらいやすくしましょう。

 確実に名前を覚えてもらうために、間違えやすい漢字や読みにくい名前は説明しておきましょう。また、外国にルーツのある名前の場合、何と呼んでほしいかも指定しておきましょう。日本語で発音しやすいか、おかしな意味の言葉に聞こえてしまわないかをあらかじめチェックしておくのは、トラブルを避けるためにも必要なことと思われます。

 2.では、自分についての情報をとりあげますが、その場にふさわしく、相手が自分と繋がるきっかけになるような情報にしましょう。自分という人間を構成しているさまざまな要素を書き出してみて、自己紹介に最適なものを選んでください(自己紹介は自分を見つめ直す作業でもあります)。

 例えば、旅先の広島で出会った人に自己紹介するときに、「熱烈な阪神ファンです」と言うのはちょっとリスクがありそうですし(広島カープの本拠地ですから……)、年配の方たちに自己紹介するとき、いま夢中だったとしても話題を最新のゲームにすると、話しかけてもらえるきっかけが少なくなってしまいそうです。改まった場からカジュアルな場まで、何通りかの自己紹介ができるようにしておくといいですね。

 この自分の情報をどの程度伝えるかですが、字数が決まっている場合、目一杯使うことで熱意を表現できます。また、最近はバラバラの情報をたくさん伝えるより、1つのことで印象づける傾向があります。例えば「堺出身です。高校は陸上部でした。今もマラソンしてます」よりは、「堺出身です。高校は陸上部で、マラソンが好きです。休みの日は仁徳天皇陵の周りをよく走っています」などと、ひとかたまりのイメージにすると「あの堺の人か……」と覚えてもらいやすいです。

 自己紹介で自分の情報の中で最も重要な名前、そして仲良くなるきっかけとなる情報を少なくとも1つ伝えたら、これからのよい人間関係のために、「よろしくね」などと、最後は挨拶で締めくくるといいですね。