文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

もう1つの文章表現

これまで文章表現の授業では、もっぱら記録や報告、レポートや自己アピール文などを取り上げてきました。

本が出ます - 文章表現の授業です

そして授業では、こういうタイプの文章は正しいトレーニングをすれば誰でも書けると学生を勇気づけてきました。

 

しかし、逆をいえばこのタイプではない文章、エッセイや小説、韻文は“誰でも書ける”とは言い難いと思っています。私は僅かですがこちらのタイプの文章で原稿料を頂いています。それをどのように書いているかと尋ねられても、上手く説明できません。

論理的な文章の書き方の授業はできても、文学的な文章ではできない。そういう文章の書き方は教えられないと思っていました。

 

そんな私がいま、自己を表現する文章を書く授業を担当しています。リーダーとなる先生が考え抜かれたプログラムを少人数クラスで行う担当者の1人です。こういう文章の書き方は教えられないと思ってきましたが、その考えは根本から覆されました。教えるのではなく、見守る。自分を表現する管のようなものを一緒に育てていくという感覚です。

学生さんたちは自分をさらけ出して書いてくれますので(授業の初めに「自分のことを書くのが嫌な人はフェイクでいい、書き方の練習だけしてください」と断っています)、上から目線で消費してしまうようなことはあってはなりません。こちらも必死で対等にいようと、つい熱くなってしまいます。

 

この授業を担当するのは、私にとって最適なタイミングでした。

1つは、短歌の結社誌でエッセイ欄を担当していることです。原稿料をもらう商品として書くのではなく、純粋に自己表現をする文章の大切さを知りました。

もう1つは、初めて卒論指導をして、論理的な文章を書くためには自己表現をする文章も書ける方がいいのではないかと思ったことです。客観的であるべき論文には主観的な表現を用いるべきではありませんが、これはとても難しい。論文とは別の場所で納得できるまで自己表現できてはじめて、感情を交えずに純粋に論理だけの文章を書けるのではないかと考えるようになりました。

 

そんなわけでいまは、もう1つの文章表現の授業で、学生さんたちが自分の心を世界に向けて表現する“管”を育てていくのを見守っています。

特任教員(1年だけ)になりました

特任教員(1年だけ)になりました - 固窮庵雑録

固窮庵雑録の方に書くつもりが、こちらに書いていました。やはり平常心を保てていないのでしょうか……削除するかもしれません。すみません。

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任期は1年だけですが、10月1日付けで特任教員になりました。新学期の1週目が終わったところです。

これまでの非常勤先(後期の非常勤は徐々に減って6コマになっていました)には年度途中でご迷惑をおかけすることになってしまったのですが、就職が決まったことを報告すると、それぞれ

  • 契約終了
  • 曜日などを出講できるよう変更
  • 集中講義に変更

となりました。任期は1年だけなので、科研費を管理してもらっている非常勤先は死守しました。

1年の任期が終わったあと非常勤のコマ数が回復するとも思えないので、これまでと同じく慎ましく暮らして貯金するつもりです。なので生活はあまり変わらないと思います。

とはいえ、専業非常勤講師の暮らしが長すぎて既にカルチャーショックの毎日です。

大学の居心地はとてもいいです。子供の頃からの友人に大学名を伝えたら「えっ! ぴったりやん!」と言われました。

更新しました! 文章を書くのに便利なサイト

学生さんが文章を書く際に、よく「こんなサイトを使えば便利」と紹介することがあるのですが、一度まとめて教えてほしいという要望があったので、お気に入りなどに入れて実際に使っているものをまとめました(最初の投稿は2015.11.29です。紹介しているサイトは何度か書き加えたり削除したりしています)。改めて集めてみると、少ないですね。「こんなの使っているよ」「あれは使わないの?」という情報をお待ちしています。

まずは、作業用・勉強用BGM youtube にたくさんあります。私はカフェの音がするのが好みです。

明らかな誤用でない限り、それぞれの表現の個性は尊重されるべきですが、より読みやすい文章を書く心がけは大切だと思います。
文化庁の資料などは、数人で1つの書類を作るときなどの基準として用いるとよいでしょう。

国語辞典の付録や編集者のための辞典なども役立ちますが、パソコンを使って文章を書く際にはこういったサイトを使うとそのままコピーできるので能率がよくなります。

書式についての考え方

文章表現の授業を担当していると、毎年必ず質問されることがあります。それは、

 横書きの場合、数字は1マスに1文字書くのか、それとも2文字書くのか?

というものです。

意外な質問でしょうか? 日常的に文章を書いている授業担当者は、このような疑問を持つことはあまりないと思います。しかし、学生さんには気になることのようです。

結論から言うと、提出先の指示に従うということになります。

提出先から書式についての指示がない場合は、担当者に質問するとよいでしょう。

 

文章は、それを読む人のために書くものです。読者が読みやすいように、読者が望む形にカスタマイズするというのが基本の考え方です。たとえ日本中の誰もが1マスに2つ数字を書いていたとしても、読者である提出先が1マスに1つと指定すれば、1マスに1つ書きます(念のために書いておきますが、指定があまりにも不合理だと思う場合、変えてもらうよう申し出るのがダメだということではありません)。

提出先の指示がなく、自由に書いてよいという場合もあります。この場合は、1マスに1つと2つのうちどちらかに決めたら、同じ文章の中で混在しないようにしてください。ちなみに、私個人は1マスに2つ派で、1桁の場合は見にくいので1つにしています。

1マスに2つというと、3桁はどうなりますかという質問が出ますが、2マスに3つの数字をバランスよく配置すればいいでしょう。パソコンを使って文章を書くときは、ソフトが自動的に配置してくれます。

 

数字の書き方以外にも、書式についての質問が来ます。横書きの場合、句読点は「、」「。」を使うのか、「,」「.」がいいのか。アルファベットも1マスに1文字か、それとも2文字か。アラビア数字を使うのか、漢字を使うのか。アラビア数字にする場合、「一人」も「1人」にするのか……などなど。

こういったことも、先に述べた数字の場合と同じ、読者が望む形にカスタマイズするというのが基本の考え方です。

 

提出先の指示がなく、質問の機会もない(本当はこういうのはよくないんですけど)場合はどうすればいいでしょうか。

閲覧する機会があれば、過去の提出物と同様に書くのがいいでしょう。例えば実習簿の場合、サンプルや先輩のものなどを見てみましょう。書式の確認以外にも勉強になりますね。

レポートの場合は、担当者の著書や論文の書式と揃えて書けば文句を言われないはずです。

 

付け足しておきますと、書式について指示をしているにもかかわらず守らない人がいます。たくさんの書類の中で書式が異なるものがあると、読むペースが乱されますし、余計な手間がかかることもあります。少なくともストレスになります。書式を守らないのは、自分は読む人にそういう負荷をかけてもいい人間なのだと言っているようなものです。指定された書式に疑問があれば質問し、必要があれば改めてもらいましょう。

 

『伝える伝わる文章表現』では、「第0課 横書きで日本語を書く」でこういった疑問に対する説明を書いています。 

独学もできるように解答例を作りましたので、夏休みの残り数日にぜひお使いください。

 

メールに「教授」と書く前に

学生さんからのメールで変だと思うことがいくつかありますが、変というより間違っているのが敬称です。とにかく大学で教えている人にはすべて「〇〇教授」と書くようなのです。

非常勤講師の私も例外ではなく、「新稲教授」という敬称のメールが届きます。そのたびに非常勤講師という一年契約の非正規雇用ではなく、教授と呼ばれるような身分になりたかったなあと遠い目になってしまうのです。

このように、職位というのはデリケートなものです。教授と呼んでおけばみんな喜ぶといったものではありません。私の知っているケースで、こだわりがあって敢えて教授に昇進することを拒んで准教授に留まっている人がいます。間違ってしまうとその場の空気が凍ることもありますから、非常に気を遣います。

ではどうすればいいのか。簡単です。敬称はすべて「先生」にすればいいのです。

 

そもそも肩書きは敬称になるのでしょうか? 教授なのか准教授なのか講師なのか助教なのか、確認してからメールの書き出しに

新稲非常勤講師

と書くのでしょうか。私がすべての授業の契約を打ち切られたときは、

新稲ゆうメイト(日本郵便期間雇用社員)

になるのでしょうか。人によって感覚が違うかと思いますが、私の感覚では肩書きは敬称にならないと思います。

 

「先生」という便利な敬称があるのに、なぜ職位を間違う危険を冒してまで「〇〇教授」と書くのか謎だったのですが、検索してみると引っかかってくるサイトの例文がことごとく「〇〇教授」なので、それを見て書いているのでしょう。参考にするなとは言いませんが、ちょっと自分の頭で考えてみてください。

 

声を大にして言いたい。敬称はすべて「先生」にすればいいです!

 

 

メールの書き方も取りあげています。

 

単位修得にまつわるメールのこと

大学は試験期間、学生さんとメールのやりとりをする機会が増える時期です。

メールの書き方については、このブログでも遅れた課題を受け取ってほしいという設定で取りあげたことがあります。

メールの書き方2 具体例 - 文章表現の授業です

この本にも載せました。

単位に関わるメールなど書かないで済むにこしたことはないですが、発熱してしまって試験を受けたりレポートを提出しに登校したりできなくなったとか、なんとかならないか問い合わせたくなりますよね。

こういった新型コロナウイルス関連の事情については、授業の担当者ではなく、大学で新型コロナウイルス関連の係があるはずですから、そこに問い合わせましょう。

ふだんの提出物などの評価については、担当の先生の裁量に任されていると思いますから、未提出のものがあるのなら、相談してみるのもいいかもしれません。

しかし、出席日数が足りなくて資格喪失になっているとか、点数がどうしても合格に届かないのがわかっているような場合は、潔く諦めてもう一度勉強しましょう。

よく年配の人が、一昔前は教授のお宅に一升瓶を持ってお願いに行ったものだなどという昔話をしますが、いまどきそういうお願いを聞き入れて単位を出すと処分されます。

そもそも、いったん成績を入力してしまうと大学が管理していますから、授業の担当者が変更するのは簡単ではありません。特に非常勤講師には、提出した成績のデータを大学内部のどこで誰が管理しているのかまったくわかりません。

メールを書く時間があるのなら、その時間を来年度単位を取るための勉強に当てましょう。

ただ、何らかのミスで間違った成績が記録されてしまったということはないとはいえないので、納得いかないときは問い合わせるとよいでしょう。その場合も、担当者が勝手に点数を書き換えることはできないので、大学の異議申し立ての制度を利用しましょう。

ちなみに、私の授業ではルーブリックまたは採点基準を公開して、点数の根拠がわかるようにしています。GoogleClassroomを採用している大学では、ふだんの提出物や小テストの点数もすべて見えるようにしています。

事実と意見の区別に関する本や動画 その2

この記事の続きです。

事実と意見についてシンプルな文で基礎を確認したいときは、前回紹介したNHKのサイト以外に fact or opinion で検索すると英語圏の子供向きのサイトがたくさん出てきます。こんな感じです。

www.google.com

ブルーバックスから追加です。理系向きの本として出版されていますが、論理的な文章を書く人には文系理系は関係ありません。

成清弘和『理系のための 理論が伝わる文章術 実例で学ぶ読解・作成の手順』、第1章に「事実と意見」について詳しく説明しています。

著者のいうところの「文章の読み取り法」について力を入れているため、国語の入試の長文問題の解説のようになっていて、自分で取り組みながら読む必要があります。歯ごたえがあるといいますか、慣れない人には怠いのかもしれないですが、じっくり勉強するのにいい本だと思います。Amazonのレビューが低評価で気の毒。それでこの本を手にしないのはもったいないです。

 

もう1冊、ブルーバックスの文章技術の本に更科功『理系の文章術 今日から役立つ科学ライティング』があります。

事実と意見の区別については、こちらはおそらく理解していて当然という前提で、その先の内容が書かれています。クリエーショニスト・ステッカーの「進化は理論(theory)であって、事実(fact)ではない」の話題など、おもしろいです。