文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

事実と意見の区別に関する本や動画 その2

この記事の続きです。

事実と意見についてシンプルな文で基礎を確認したいときは、前回紹介したNHKのサイト以外に fact or opinion で検索すると英語圏の子供向きのサイトがたくさん出てきます。こんな感じです。

www.google.com

ブルーバックスから追加です。理系向きの本として出版されていますが、論理的な文章を書く人には文系理系は関係ありません。

成清弘和『理系のための 理論が伝わる文章術 実例で学ぶ読解・作成の手順』、第1章に「事実と意見」について詳しく説明しています。

著者のいうところの「文章の読み取り法」について力を入れているため、国語の入試の長文問題の解説のようになっていて、自分で取り組みながら読む必要があります。歯ごたえがあるといいますか、慣れない人には怠いのかもしれないですが、じっくり勉強するのにいい本だと思います。Amazonのレビューが低評価で気の毒。それでこの本を手にしないのはもったいないです。

 

もう1冊、ブルーバックスの文章技術の本に更科功『理系の文章術 今日から役立つ科学ライティング』があります。

事実と意見の区別については、こちらはおそらく理解していて当然という前提で、その先の内容が書かれています。クリエーショニスト・ステッカーの「進化は理論(theory)であって、事実(fact)ではない」の話題など、おもしろいです。  

学園祭に出店するための企画書

野田尚史・森口稔『日本語を書くトレーニング』は文章表現の授業の定番テキストです。今まで複数の非常勤先でこのテキストが教科書や参考文献に指定されていました。このテキストの特徴は、なんといっても時代に合ったトピックだと思います(拙著の練習問題・課題の作り方もこのテキストの影響を受けています)。私は初版から使用していますが、古く感じていたトピックも第2版では時代に合ったものに変更されています。版の分からない古本をアプリなどで購入するのではなく、新刊を購入するのをオススメします。

さて、この本にはトレーニング9「企画や提案を出す」に「学園祭での韓国風お好み焼き屋の企画書」という、いまどきのトピックが取りあげられています。

学園祭では大学から補助金が出ることが多いものですが、補助金を受け取るにはそのための書類を書かなければなりません。与えられたフォームに必要事項を書き込むだけの簡単なところもありますが、企画書と呼べる書類を要求されるところでは、どう書いたらいいのか相談されることがあります。今年度は学園祭が復活することを願って、学園祭にサークルで屋台を出店するための企画書の書き方について、気の付いたところを書いておきます。

 

まず書式について。企画書の書き方については、テンプレートが充実していて、ネット上にも無料のものがたくさんあります。たいてい、

  1. 現状分析
  2. 目的・目標
  3. 内容
  4. 予算
  5. スケジュール

というものです。もう少し詳しくなるとこんな感じ。

    1.現状分析
    2.企画の概要
    3.内容

       3-1.ターゲット
       3-2.コンセプト
       3-3.売り上げ目標
    4.予算
 5.スケジュール

 レイアウトはこういったものを参考にするとよいでしょう。慣れないうちはそのまま使っても悪くないですが、使いやすいものは当然使う人が多いので、みんなと一緒になりがちです。慣れてきたら、アレンジしたり、自分で一から作ってみるのもいいですね。

ちなみに私は授業ではGoogleスプレッドシートのテンプレートを使って説明しました。

www.google.com

こういったテンプレートのほとんどは、ビジネスの企画書を念頭に置いて作られていますが、内容については、ビジネスの企画書と、学園祭の企画書では大きく異なるところがあります。ビジネスの企画書では何よりも利益が出るということを重視しますが、学園祭の企画書では必ずしもそうではないという点です。大学は、屋台が収益を上げることではなく、その企画を通じて学生が何かを学んで成長すること、つまり(企画書をきちんと書けるようになってほしいというのもそれに含まれますが)、企画を立てて実行するという経験をして成長することを期待しているのだと思います。

ですから、ビジネスの企画書では利益を出すということが第1の目的になりますが、学園祭の企画書で「昨年度まではこういう理由で売り上げが伸びなかった! そこで私たちはこういう企画で売り上げを伸ばして利益を上げたい!」と書くのはあまり求められてなさそうです。補助金の概要をよく読んで、何を求められているのかを理解し、反映させて書きましょう。たとえばこんなのはどうでしょうか。

  • 学園祭を盛り上げたい。
  • 話題になって、もっとこの大学を知ってほしい。
  • 近隣住民に楽しんでもらい、大学に親しみを持ってほしい。
  • 高校生に楽しんでもらい、私たちの後輩になりたいという気持ちになってほしい。

このように、まずは目的をはっきりさせましょう。それによって、どのような人たちをターゲットに販売するのかもはっきりしてきます。

 

次に、どのような屋台にするのかを書きます。重要なことは、こんな屋台を出したいなという夢物語ではなく、実行可能な内容を書くことです。そのためには、できるだけ具体的に書く必要があります。

例えば屋台で出す料理については次のようなことを書くといいでしょう。

  • 商品のイメージ写真やイラスト
  • 作り方
  • 作るために必要な道具、機材。どこで調達するか。レンタルか。
  • 材料。どのくらいの量か。どこで購入するか。

屋台その物のしつらえについてもできるだけ具体的に書きましょう。

  • 屋台のイメージイラスト。
  • どのように用意するか。設置はどうするか。
  • 飾り付けはどうするか。
  • 音楽を流すなら機材はどうするか。曲名。
  • 大学構内のどこに設置するか。地図。

その他にも、

  • 広告のチラシのサンプル。何枚作るか、どこで配布するか。
  • スタッフのお揃いのTシャツを作る。デザインサンプル。

など、具体的にイメージできるように書いてください。

 

具体的にどのような屋台にするのかが決まったら、実現可能であることをアピールします。

  • 予算。材料費やレンタルの費用など、できるだけ詳しく。
  • 売り上げ目標。今まで出店したことがあれば、それを元に予想する。

企業ではないから利益を上げるのが第一の目標ではないとはいえ、赤字になるのは避けたいです。お金関係は予算を立てて、誰が責任を持って管理するのかもはっきりさせておきましょう。

  • 学園祭当日までのスケジュール
  • 参加する人たちの名簿、それぞれの担当する役割。

とにかく具体的に、補助金さえ出せばこのサークルはもう明日にでも出店できるな……と思わせるほど具体的に書きましょう。

 

それと同時に、心配の種がないようにしましょう。学園祭で食べ物の屋台を出す場合、心配になるのは食中毒です。アレルギーについても気を配る必要がありますね。また、火の元についてや、消毒など感染対策がきちんとされているかも気になります。

  • 「180度で3分焼く」など、高温で調理する作り方を詳しく書くことで、食中毒の心配がないことをアピール。
  • チラシに原材料を公開、アレルギーマークのプレートを表示するなどアレルギー対策。
  • アルコール消毒のスプレーを設置。テーブルはお客さん毎に消毒。
  • 火の元は調理担当者だけでなく複数のスタッフで確認する。

このサークルなら安心して任せられると思ってもらえるように、不安材料を潰していきましょう。

 

……と、こんな感じでしょうか。分量はA4で1~2枚のところが多いようです。今年の秋は学園祭が復活して、おいしい屋台を出せますように!

『伝える伝わる文章表現』各課題のテーマについて

『伝える伝わる文章表現』、明日4月1日の刊行ですが、テキストに採用していただいたところもあるようです。ありがとうございます!

masudanoriko.hatenablog.com

文章表現の授業で取りあげる題材については、あくまで書く練習のためにあるので、表面的な理解にとどまっても課題さえクリアできればいいと言えばいいのですが、ちょっともったいない気がします。課題として誰にでも書きやすいものであると同時に、学生さんの世界を広げ、問題意識を持つきっかけになるものが理想だと思っています。

『伝える伝わる文章表現』は、課題を書く時間を含めて1課が90分授業1コマを想定していますが、時間に余裕がありそうなクラスでは、ぜひ題材の内容についても詳しく取り上げてください。巻末に参考文献として記したもの以外に、話のネタ、私が授業に持っていった本や動画、学生さんが見つけてくれた本や論文を記しておきます。

  • 基礎編第1課 絵葉書やイラストの作者や内容の解説。
  • 基礎編第2課 クレーマーに関する体験談。メルカリやヤフオクでトラブルになっている例を探して分析。
  • 基礎編第3課 じゃんけんの歴史。

  • 基礎編第4課 ファストフードに関する問題。高校の授業でスーパサイズ・ミーを観たという学生さんもいました。

  • 基礎編第5課 心理学の授業で血液型と性格の関係について取りあげることがよくあるようで、学生さんたちはかなり専門的な資料を紹介してくれます。下記の論文はネットで読めます。

www.jstage.jst.go.jp

  • 基礎編第6課 救急車の適切な利用は医療系の専門学校の学生さんにとっては大きなテーマで、みんな真剣です。

  • 基礎編第7課 この回は毎回、時間内ギリギリです……
  • 応用編第1課 日本語におけるローマ字の歴史。ポルトガル語式ローマ字、オランダ語式ローマ字、訓令式ローマ字の画像資料。石川啄木『ローマ字日記』(居眠りしている学生も必ず起きます。)

    takubokudiary.higoyomi.com

  • 応用編第2課 日本における子育て。子供食堂
  • 応用編第3課 この回もあまり時間に余裕がないです……
  • 応用編第4課 高校野球にまつわる問題。スポーツと商業主義。
  • 応用編第5課 「やさしい日本語」について。留学生に話を聞く。

www4414uj.sakura.ne.jp

  • 応用編第6課 エントリーシートをピアレビュー、自分が採用する側だったらどれにするかを選んで、どこがよく書けているかを考える。
  • 応用編第7課 入れ墨の歴史。

 『伝える伝わる文章表現』、テキストとして使った感想をぜひお寄せください!

情報の重要性をわかってもらうゲーム 改良版

学生さんに情報の重要性をわかってもらうためのゲームを紹介します。もともとTwitterで話題になったゲームをもとに、入手した情報が勝敗を左右するようにアレンジしました。

ゲームの進め方は次の通り

  • 政府1人、マスコミ2人、残りは3~5人程度のグループに分かれます。1つのグループを1つの企業とします。
  • 政府は折り紙を管理し、マスコミや企業に配ることができます。
  • マスコミは「情報」を管理し、政府や企業に売ることができます。
  • 企業は折り紙で鶴を折ります。鶴がお金になります。お金の使い方は自由です。別の企業から人を引き抜いても、雇っても、鶴や折り紙を買ってもかまいません。
  • たくさんお金を持っている企業の勝ちになります。

政府役はちょっと退屈なので講師が務めてもいいと思います。

マスコミ役の人は情報を作ります。折り紙に書いて、見えないように折っておくのがいいでしょう。情報は売れますので、高いほど重要なものにするのがコツです。例えばこんな感じです。

  • 鶴1羽で交換:タピオカおいしい
  • 鶴3羽:この情報を持っている企業は他の企業の青い鶴をもらえる
  • 鶴3羽:この情報を持っている企業は他の企業の社員1人をもらえる
  • 鶴5羽:○時○分に株価が暴落して、鶴の半分を政府に没収される
  • 鶴10羽:○時○分に革命が起きて、一番鶴の少ない企業が全ての鶴をもらえる

鶴を折るのを分業にしたり、得意な人を引き抜いたりということも勝敗を左右するのですが、情報の大切さを知ってほしいため、マスコミ役の人に活躍してもらうところが、参考にしたゲームと異なるところです。

今年度は課題を早く終えた人たちでゲームをしたのですが、みんなゲームの意図をよく理解してくれて、重要な情報ほど手に入りにくいように進めてくれました。企業同士で情報を売って共有したり、マスコミと政府が癒着したりして、なかなか楽しかったです。

 

いまはスマホさえあれば誰でも無料でたくさんの情報を手に入れることができます。しかし、何も考えずにただ情報の波の中に飛び込んで、信じてしまうのは危険です。

大学で学ぶなどして学問的なトレーニングを受けてこそ手に入る情報があり、多くの場合、そのようにして手に入れた情報こそ価値があることに気付いてほしいと思います。

 

 

もとのゲームについてtogetterにまとめられていました。@konbuwasabi さんのアカウントは今は使われていないようです。

togetter.com

本も出ています。

masudanoriko.hatenablog.com

 

本が出ます

いつもこのサイトを見て頂いてありがとうございます。

文章表現の授業を元にした本、『伝える伝わる文章表現』が出ます!

4月1日刊行ですが、Amazonではもう予約できるようです。

書籍のご案内 | 株式会社ケイエスティープロダクション

 

  •  第0課 横書きで日本語を書く

基礎編

  • 第1課 具体的に伝える(1)
    【課題】イラストの説明文を書く
  • 第2課 事実と意見という考え方を理解する(1)
    【課題】マグカップをフリマに出品する文章を書く
  • 第3課 段落に分けて書く
    【課題】じゃんけんの説明文を書く
  • 第4課 トピックセンテンスを使って書く(1)
    【課題】ファストフードの説明文を書く
  • 第5課 引用して書く
    【課題】血液型による性格判断について説明文を書く
  • 第6課 構成を考えて書く(1)
    【課題】救急車の有料化について意見文を書く
  • 第7課 文章を要約する
    【課題】エッセイを要約する
応用編
  • 第1課 メールを書く
    【課題】遅れた課題を受け取ってもらうためメールを書く
  • 第2課 具体的に伝える(2)
    【課題】子供食堂を見学した記録を書く
  • 第3課 段落を分けてトピックセンテンスを使って書く
    【課題】バッグクロージャーの説明文を書く
  • 第4課 事実と意見という考え方を理解する(2)
    【課題】夏の甲子園ナイトゲーム化について意見文を書く
  • 第5課 読む人を意識して書く
    【課題】外国人の住むマンションに配布するお知らせを書く
  • 第6課 自己アピール文を書く
    【課題】エントリーシートを書く
  • 第7課 構成を考えて書く(2)
    【課題】入れ墨(タトゥー)がある外国人観光客の温泉利用について意見文を書く
 
問題集の形ですが、【練習】【課題】に【解答例】と【解説】を付けました。
1つの章が90分授業1回の内容です。
事実と意見を区別することと、段落とトピックセンテンスを重点的にとりあげています。
応用編第7課で、資料を引用して1000字の意見文が書けることを目標にしました。
イラストの説明文バッグクロージャーの説明文は、盛り上がるので授業でよくとりあげていました。ぜひ試していただきたいです。
テキストとして教室で使うときは、早くできた学生さんが退屈することなく考えを深められるように、現在の社会で重要なテーマを選びました。

文章の書き方には正しい1つの答があるわけではないので、解答がないテキストもよくあります。私自身、授業でそういうテキストを使っていますが、解答例がないのに困ることもありました。そこで、学生さんの提出物も参考にして解答例を作りました。
また、一人で勉強することもできるように、解説も書きました。
 
文章表現の授業をしながら、こんなテキストがあればいいのにと思っていたものになりました。1つだけ嫌がられそうな点は、“必ず手を動かして実際に書いて練習してほしい”と要求しているところです。大学生、専門学校生、やる気のある高校生、記録や報告の文を書く社会人の皆さんにぜひ手にとって頂きたいです。どうぞよろしくお願いします。

事実と意見の区別に関する本や動画

論理的な文章を書くために必要な「事実」と「意見」を区別するという考え方ですが、学校の国語の時間で勉強した記憶がないと言われます。

しかし、既に平成20年の学習指導要領「生きる力」第2章 各教科 第1節 国語 (今の大学生はこの学習指導要領で学んでいますよね)では第3学年及び第4学年に以下のように記されています。

C 読むこと

(1) 読むことの能力を育てるため,次の事項について指導する。

(略)

イ 目的に応じて,中心となる語や文をとらえて段落相互の関係や事実と意見との関係を考え,文章を読むこと。

(後略)

第5学年及び第6学年では以下のように記されています。

C 書くこと

(1) 書くことの能力を育てるため,次の事項について指導する。

(略)

ウ 事実と感想,意見などとを区別するとともに,目的や意図に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりすること。

(後略)

C 読むこと

(1) 読むことの能力を育てるため,次の事項について指導する。

(略)

ウ 目的に応じて,文章の内容を的確に押さえて要旨をとらえたり,事実と感想,意見などとの関係を押さえ,自分の考えを明確にしながら読んだりすること。

(後略)

習っているんですね…?

ちなみに私はこの事実と意見の区別を、大学に入学してから、『理科系の作文技術』で知りました。

まだ読んでいませんが、漫画版もあるようです。

最近のものでは『大人のための国語ゼミ』に事実と意見の区別が詳しく説明されています。

この本に付いては過去記事で紹介しています。

masudanoriko.hatenablog.com

いまさら馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないのですが、小学校5・6年生向けのNHKの番組がとてもわかりやすいです。

www.nhk.or.jp

www.nhk.or.jp

www2.nhk.or.jp

高校講座のロンリのちからでも取りあげられています。

www.nhk.or.jp

私はこれらの動画を食事の時に1つずつ見ました。事実と意見について今ひとつよくわからないという人は、隙間時間を利用して復習することをお勧めします。

なぜレポートの課題があるのか

レポートの書き方の参考文献は何がお勧めですかと言われたら、私も戸田山和久氏の『論文の教室』をお勧めします。新版が出てますね。いいなあ、あやかりたい。

 あやかりたいので文体をちょっと寄せて書いてみました。では、どうぞ。

 

 

 教員だってラクじゃない


 レポートの課題が出されて憂鬱なキミに一つだけ知っておいてほしいことがある。レポートというのは、担当教員にとっても負担が大きい存在だということだ。
 たとえば授業内でレポートを課題にすると、当たり前のことだけど添削に時間がかかる。授業時間と同じくらいの時間を毎回添削に費やしたり、休日は添削に追われたりする。
 単位認定を試験ではなくレポートで行うことにすると、試験よりも採点に時間がかかる。時間のことを考えると、選択式の記号問題にするのが一番ラクだ。おまけにレポートは採点の仕方がわかりにくい。時間をかけて採点したあげく学生さんから評価に異議申し立てなどされた場合は、時間的にも精神的にも消耗する。
 そういうリスクを避け手間をできるだけ省こうとするなら、レポートなんて書かせないに限る。学生さんもラクだって喜んでくれるし、添削に追われることもなくなるだろう。
 なんでそうしないかって? それはひとえに学生の皆さんに対する愛! 大学生なんだもの、レポートくらい、まともに書けるようになってほしいという、愛なんですよ!!

 

 楽勝科目には怒るべき

しかしレポートを課す教員の中には、ごく希に(だと、思いたい。同業者としては)だけど、提出さえすれば単位を出す教員がいる。参考文献の丸写しやネットからのコピペでも、見た目だけはレポートの形になっていれば大丈夫。書いているうちに自分でも何のことかわからなくなってるんじゃないかという支離滅裂なものでも、コピペじゃなくて自分の言葉だから偉い偉いと褒めてくれる。単位を取ったキミは「なーんだ、レポートって楽勝だったなー」という感想を持つだろう。
 喜んでいる場合ではないのである!
 そんな、レポートとも言えない代物にあっさり単位を出すということは、その教員がまったくやる気がないか、有り得ないほど低い能力の持ち主かのどちらかである。つまりキミは、大学に授業料を支払っているにも関わらず、真っ当な教育を受けていないということだ。
 もしかしたら、別にそれでもいい、授業料を払って単位を金で買っているのだという人もいるかもしれない。そういう人は楽勝科目ばかりを器用に選んで、最小の勉学で大卒の肩書きを手にすることに価値を見出すのだろう。
 いまどき文章を書くリテラシーを身に付けていない大卒がどれほど危なっかしいものか想像するだに恐ろしいんだけど、まあそういう人は今この文章を読んでいないだろう。
 そういう人にはこの声は届かないと思うけど、楽勝科目には「なんかこれおかしくないか?」「こんな風に甘やかされててレポートが書けないままだとヤバイんじゃないか?」と思ってほしい。

 

 コピペはバレている

レポートの書き方がわからない学生さんがやりがちなのが、インターネット上の記事のコピーアンドペースト、略してコピペである。昔から参考文献の丸写しっていうレポートはあるけど、手軽さの点で勝っているからだろう、最近は圧倒的にこのコピペってやつが多い。
 コピペをしてもバレないと思っている学生さんがいる。参考文献はともかく、ネットの記事なんかセンセイは知らないだろうと思っているのだ。
 んなこたあ、まず有り得ない。今の五十代以下で大学の教員にでもなるようなのは、同じ世代の中でも日常的にパソコンを使ってきた人間がほとんどだ。2ちゃんねるの誕生に立ち会い、タグを打ちながらホームページを作り、グーグルがない時代によろずのことを検索していたのである。専門関係のサイトは当然巡回している。キミがコピペしたWIkipediaの記事だって、書いたのは実は授業を担当した教員かもしれない。
 まあ何事も例外はあるからパソコン音痴の先生もいるけれど、たいていの場合、キミがふつうのキーワードで検索して辿り着く記事くらい、我々はすべて押さえていると考えてもらった方がいい。もちろんエゴサーチもしている。某大学で私が「フェアリー」と呼ばれてることだって知ってるからな!

 

 アレンジしてもバレている

単純なコピペではなく、コピーした記事をアレンジしているレポートもある。二つ以上の記事を合体させたり、文体を変えたりしているのである。こういうタイプもバレているのは言うまでもない。
 友人同士で一つのレポートをアレンジして使い回すというパターンもある。参考文献やネットで引っかかってこないからバレないと思っているのかもしれないが、甘い。
 そもそも大学の教員は研究者でもあるっていうことを忘れてもらっては困る。文章にはリズムというものがあって一旦完成した文章を素人がアレンジすれば必ず不協和音が出る。我々は、その気になればキミたち素人のアレンジしたレポートを分類して、たちどころに系統図を作ることだってできるのだ。

 

 書く技術を身に付けよう

レポートを書く技術が必要になるのは、なにも単位を取るためだけではない。ちゃんとしたレポートが書けるってことはつまり、ある程度の長さのまとまった文章、説明文や意見文や報告書といったものが書けるっていうことだ。
 文章を書く技術は、ある時はキミの人生を豊かにしてくれるし、またある時はキミを守ってくれるだろう。
 インターネットの登場で、プロではない人たちが文章を発表する機会は格段に多くなった。個人でSNSやブログを書いたり、クラブや趣味のサークルでサイトを運営したりすることはもはやふつうのことだ。ネット上にアップされた文章は、閲覧制限をしない限り全世界の人が閲覧できる。文章を書く技術が身に付いていれば、筆一本(ではなくキーボードか)でキミの世界は大きく広がるのだ。
 反対に、ちゃんとした文章を書けないと損をする。例えば仕事をしていて業務の記録や報告書などの文章はさっさと書けるに越したことはない。それにいまどきは、いったん職場で問題が起きれば、情報開示の流れを受けてキミの書いた書類が表に出ることがある。ここできっちりした文章の書き方ができていないと、不利な状況に陥ったり、場合によっては損害を被るかもしれない。
 だからこそ、大学生の今のうちに、レポートの書き方、ものを書いて発信する技術を、身につけるべきなのだ。誤解されないわかりやすい文章を書く技術は、これからの人生でキミの身を守り、チャンスを引き寄せるツールになるだろう。