文章表現の授業の教材を作るには、わかりにくい文章のサンプルが必要です。
選挙を控えたこの時期はまたとないチャンスです。論理的な文章を書くための基本的な技術である「事実を記述する」ということができていない文章が、立候補者のチラシなど*1に豊富に掲載されています。できるだけたくさん集めたいものです。
「事実を記述する」とはどういうことかはこちら↓を御覧下さい。
選挙の立候補者のチラシを用いて次のような授業ができます。
- 候補者役と有権者役という役割を決める。
- 有権者役の学生さんは事実を表す文章になっていない部分を見つけてマーカーなどでチェックし、候補者役にその部分について質問する。
- 候補者役の学生さんは質問に対して具体的に、事実を表す文章の形で答える。
たとえば、
- 女性が働きやすい環境を整備します!
なら、具体的に何をしてくれるのかよくわかりません。女性が働きやすい環境というのがどのような環境なのかは人それぞれなので、事実を表す文になっていないのです。
- 保育士の数を25パーセント増やし、待機児童を4年以内に0にします。
なら事実を表す文だと言えるでしょう。数字などを用いて具体的に書くと、内容が誤解されずに伝わります。
これ以外にも、
- お年寄りに優しい町づくりをします。
- 財政問題を先送りしません。
- 被災地の復興最優先で政治運営にあたります。
- グローバルな人材を送り出せる教育をします。
- 若者が将来に夢を持てる日本を作ります。
- 消費税の増税分は全額国民に還元します。
- 原発依存度は可能な限り低減させます。
- 地方自治体の自立を促します。
- 政治にビジネス感覚を取り入れます。
- 雇用問題を抜本改革します。
というように、大量にサンプルを集めることができます。「財政問題を先送りしません」の場合、「財政問題」は具体的に何か、「先送りしません」というのはいつ何をするのかを伝えていません。こういうサンプルを集めていると、政治家はもしかするとわざと事実を表す文にしていないのかもしれないと思えてきます。
*1:そのまま使用すると特定の候補者を批判したり支持したりしているとの誤解を招きかねませんので、加工して架空の候補者のチラシを作成するのがいいかもしれません。