文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

後期第6回 情報を信じる前に

学生さんがレポートに使った資料をチェックしていると、基本的に何でも信用するという傾向があって心配になってきます。素直なのはいいことですが、信頼できない資料からは、当然のことですが信頼できないレポートしかできません。レポートだけの問題ではなく、信頼度の低い資料を堂々と引用しているレポートを見ていると、それを書いた学生さんの人生も心配になってきます。

さて、授業も6回め、ここら辺で一息入れましょう。御覧になった方もいらっしゃるかと思います。話題になった動画を取り上げました。


テレビパン - YouTube

始まってすぐ、さすがにこれは冗談だろうと皆が気付いてクスクス笑い出したのですが、1:33あたりから、一瞬ではありますが真面目な顔になって本物のニュースなのかもしれないと迷う学生さんがいました。小麦粉に含まれるフェニルアラニン(C9H11NO2)とコカイン(C17H21NO4)と覚醒剤(C9H13N)の分子式が似ているというナレーションの部分です。

なぜ信じそうになったのかと尋ねると、化学式はよく知らないから、という答が返ってきました。自分が理解できない難しいことはとりあえず信じておくのだと言うのです。

驚きました。しかしこういう学生さんは一人ではなく、そばにいた数人も同調したのでよけいに驚きました。

おそらく彼女たちは、これまでの人生をとりあえず信じるという姿勢でうまくやってきたのだと思います。よくわからなくてもとりあえず信じて従う子供は、親や教師にとってある意味扱いやすい「いい子」だからです。

しかし、大学生になった今は、ものごとを信用できるかできないかは自分で判断しなければいけません。自分が理解できない難しいことは、調べて理解してから信じるか信じないかを決めましょう。その場で信じず、とりあえず保留にしておきましょう。ーーそんな話をしました。

 

このビデオのように、まったくのでたらめでも演出1つである程度まで本物らしい印象を与えることができます。文章の場合は、本当らしい書き方に惑わされず、内容をきちんと判断する習慣をつけてほしいものです。

そのための練習として、授業では2つの文章を用意しました。一つ目は有名どころ、ネットで広まった作者不明の「パンは危険な食べ物」の「パン」を伏せ字にし、この危険な食べ物を禁止すべきかどうか話し合いました。

犯罪者の98%はパンを食べている。

パンを日常的に食べて育った子供の約半数は、テストが平均点以下である。

暴力的犯罪の90%は、パンを食べてから24時間以内に起きている。

パンは中毒症状を引き起こす。被験者に最初はパンと水を与え、後に水だけを与える実験をすると、2日もしないうちにパンを異常にほしがる。

新生児にパンを与えると、のどをつまらせて苦しがる。

18世紀、どの家も各自でパンを作っていた頃、平均寿命は50歳だった。

これは元ネタを知っている学生さんも多く(先のビデオでも使っていましたね)、誰も引っかかりませんでしたが……。

しかし次の「DHMOに反対しよう」になると、長文で硬い文章だからか、多くの学生さんがとりあえず信じる姿勢に戻りそうになっていました。冒頭の部分だけ引用します。

DHMOとは

DHMO (Dihydrogen Monoxide) は水酸の一種であり、無色、無臭、無味の化学物質です。比較的古くから工業活動に使用されていましたが、産業の巨大化や軍事技術の発展に歩調を併せるかのように、その使用量は増加してきています。

DHMOは、毎年無数の人々を死に至らしめています。報告される死亡例の多くは、偶然液体状のDHMOを吸い込んだことによるものですが、危険はそれに留まりません。カナダの医学病院において、固形状態のDHMOに接触すると身体組織に激しい損傷を来たすことが実験で確認されています。又、DHMOの吸収が発汗、多尿、腹部膨満感、嘔気、嘔吐、電解質異常などを引き起こすことも臨床的に確認されています。

アメリカの国立衛生研究所のレポートには、末期癌患者から採取した癌細胞には多くのDHMOが含まれているという事実が(さりげなく)記されています。癌の研究者にとってこれは公然の事実となっています。

訳者の知人の医師も、この事実を認めています。彼女は「まともな医師ならばこの事実を否定できるはずはない」とも述べています。

出典:DHMO (Dihydrogen Monoxide) に反対しよう

Dihydrogen Monoxideが「二酸化一水素=水」だと気付くことができなくても、現代では携帯端末などですぐに調べることができます。レポートの資料を探すときも、本当らしい見かけだけで判断するのではなく、わからないことはどんどん調べて勉強しながら信頼できる資料を探しましょう。

自分が理解できない難しいことはとりあえず信じておくという姿勢から、自分が理解できない難しいことはとりあえず保留にする、そして理解できてから信じるという姿勢に切り替えることが必要です。

後期第5回 まともな情報の集め方 続き

今回のレポートは臓器売買がテーマでしたので、医療関係の書籍の資料を多く集めました。このような専門的な資料の場合、次のことをチェックした方がいいでしょう。

  • 出版社 いまどきの出版社はふつう自社のサイトを持っているはずです。調べましょう。医療専門の出版社なら、当然、出版物の信頼度は高くなります。そうでない場合はその出版社が他に出している医療分野の本にどのようなものがあるかをチェックしましょう。『○○で癌がみるみる治った』などという本ばかり出していたら、注意した方がいいでしょう。
  • 著者 著者のプロフィールをチェックしましょう。その本に載っていなければインターネットで調べましょう。「博士(医学)*1」という学位は医師免許の有無とは関係しませんが、医学博士=医者だと思われがちです。この思い込みを利用して医者ではないのに医者であるかのような印象を与える著者は信頼できないと考えてよいと思います。また、学位を持っていて CiNii Articles - 日本の論文をさがす - 国立情報学研究所 で論文が1件もヒットしない著者も心許ないと思います。
  • 関連団体 医療関係の書籍の場合、著者と関係のある団体の利益になるような本がたくさんあります。出版社自体がその団体のPRのために作られているようなところもあります*2。これもインターネットですぐに確かめることができます。

これはどの分野の資料を集めるときも気を付けるべきことと思います。授業で学生さんが集めてきた資料を持ち寄って、みんなでチェックしてみるとよいと思います。

参考文献のコピーをとるときは、見返しもとっておくとよいでしょう。見返しには著者・出版社・刊年など、その本の情報がすべて書かれています。こういったデータはコピーに手書きで書き込む人が多いようですが、見返しもコピーしておくと写し間違いの心配もなく、参考文献リストを作るときに情報が足りなくて慌てることもなくなります。大学院時代、先輩に教えてもらって今も続けていることの1つです。

*1:肩書きとしては「医学博士」と書くこともあります。

*2:「『ダメな科学』を見分けるための大まかな指針」にも「利益相反」という項目がありました。

後期第5回 まともな情報の集め方

前後しますが、第4回の続きです。

調べ物でインターネットを利用するのはごくふつうのことになりましたが、乱暴な検索をする学生が目立ちます。調べたい語を一言、検索エンジンに入れるだけで、出てきたものを何の迷いもなく引用する学生です。私は過去のレポートでにニコニコ大百科からテーマとなる用語の意味を引用しているのを見たことがあります*1。引用は、自分の主張の応援だとイメージしてください。レポートに箔を付けることのできる、権威ある、信頼に値するものがよろしいです。

具体的には学生さんそれぞれの提出物を1つずつチェックするしかないのですが、全員に共通することとして、インターネットから引用するときは、最低限、次の2つのことを心に留めておいてください。

  1. 運営者の自己紹介の頁は確認しましょう。そしてそのサイトがどのような性格のものか、レポートに引用できるものかどうかを判断してください。特殊なレポートを除いて、基本的に、運営者の本名や所属がわからないものや、専門家かどうかもわからないサイトは避けるべきでしょう。
  2. 専門家がナビをしてくれるサイトを活用しましょう。信頼できるサイトからリンクしているものなら、それもまた信頼できる情報である可能性が高いと考えられます。また、その分野のデータベースなどがあれば活用しましょう。インターネットの広大な海に無鉄砲に飛び込むのではなく、まずは専門家のサイトにアクセスしましょう。

*1:ニコニコ大百科がダメだというのではありません。文章にはその内容に応じてふさわしい出典というのがあります。大学で書くポートでニコニコ大百科がふさわしいのはごく限られたケースだと思います。

わかりにくい文章のサンプルを集める その2

わかりにくい文章のせいでトラブルになっているサンプルの宝庫がネットショッピングです。ヤフオクなどで個人が出品している商品の説明だけでなく、チェックをしているであろうショップの説明文にもわかりにくいものが溢れています。

中には、大きさや重さを正確に表示していても、

  • 思ったより小さくて物が入りませんでした。   [ポーチ]
  • 重いです。荷物を入れると持てたもんではありません。 [バッグ]

などと低い評価を付けられている気の毒なものもあります。こういった“いちゃもん”をつけているとしか言えない客に当たってしまうのは事故のようなものかもしれません。しかし、ちょっとしたことでトラブルを防げる場合もまた多いのです。

そのちょっとしたこととは、第2回で学んだ事実を表す文の形で書くことです。

たとえば、

  • すぐに発送します。

ではなく

  • 本日付で発送します。

と具体的に書くのでしたね(第2回 事実を記述する - 文章表現の授業です)。「すぐに」という言葉ではどの程度急いでいるのか人によってイメージは違いますので、誤解されないような表現を使います。衣類によくある、

  1. ゆったりしたジャケットです。/タイトなシルエットです。
  2. 柔らかい肌触りです。/しっかりした生地でできています。

といった表現も、それだけではなく具体的な説明が必須です。

1の場合、体型は人それぞれなので、ゆったりしていない/タイトではないと感じる人もいるかもしれません。バストウエストの仕上がりサイズを具体的に㎝で書いておかないといけません。

2の場合も、布の肌触りの感じ方は個人差がありますから、チクチクすると感じる人もいるでしょうし、しっかりした生地というよりゴワゴワだと思う人もいるかもしれません。「アクリル50%・綿40%・レーヨン10%、裏起毛」「5号帆布」など、生地について具体的なデータを提供しておくのがよいでしょう。

「たっぷり飲めるマグカップです」と書かれていた際に、「たっぷり飲めなかった」という人はいても、「350CC 入るマグカップです」に「350CC  入らない」というクレームは付けようがありません。もしそういう指摘があれば、不良品です。

これは、「たっぷり」という言葉を使ってはいけないということではありません。イメージを伝えることは大切です。しかし個人差のあるイメージだけではなく、「350CC 」という誰にとっても共通の具体的な説明を添えた方が誤解されないということなのです。

このトレーニングは次のような授業形式で行うことができます。

  1. インターネットオークションでわかりにくい商品説明の文章を集めましょう。
  2. その文章で客がどのような誤解をしてしまうか考えましょう。
  3. 誤解されないように文章を書き直しましょう。

 

しかし商品によってはわざと具体的に説明するのを避けているような説明文もあります。化粧品やサプリメントには次のような表現が多く見られます。

  1. お肌がぷるぷる
  2. みずみずしい素肌に
  3. 効果を実感

「ぷるぷる」とはどういう状態なのかひとりひとり感じ方は違いますし、「ぷるぷるになります」と言い切らないところが無責任だと思います。こういった言い切っていない商品はできるだけ買わないようにしているのですが、そうもいかないところが悔しいです。

 

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ところで商品の説明で最も難しいのは色の説明ではないかと思います。先日、通販でロイヤルブルーのワンピースを買いました。お店で試着した商品だったので安心して購入したのですが、仕事から帰宅して夜間に配送された商品を寝室で試着した私は、鏡に映った自分の姿を見て驚きました。ショップで試着した時とは別物なのです。

原因の1つは照明でした。寝室はくつろげるように白熱灯に近い色の電球にしているのですが、これがショップのライトの色調とは違っていたのです。

2つめは色の名前のイメージです。実物を試着したことがあったとはいえ、商品の「ロイヤルブルー」という色名と、私がイメージする「ロイヤルブルー」は微妙に違う色でした。

翌朝、自然光で見たワンピースはイメージに近い色だったので返品はしませんでしたが、改めて色を説明することの難しさを痛感しました。

 

色の説明については、私は

Amazon.co.jp: 新版 色の手帖―色見本と文献例でつづる色名ガイド: 永田 泰弘, 小学館辞典編集部: 本

を愛用しています。この事典の特徴は文学作品の用例があることで、色の説明に詩的なニュアンスを加えたいときに便利です。人気のあるロングセラーなので持っている人も多いのではないでしょうか。京都のだいやすという着物の店は、ネットショップの色の説明に「小学館発行『色の手帖』参照」と記しています。

 

また、色の正確さを追求するならプロが使うカラーチャートを取り入れてやりとりすると誤解が劇的に減ります。

Amazon.co.jp | DIC ポケット型カラーチャート | ホビー 通販

 

カラーチャートや色に関するカタログを利用するときには、肝心の色が変色していないことを確かめてください。部屋に置いているだけでも蛍光灯の紫外線で変色しますので、微妙な色をやりとりする職場では数年おきに買い替えているところもあるそうです。

 

色の説明がいかに難しいかは次のようなワークショップで実感してもらえます。

口紅を複数用意する(カタログでも可)。

口紅の色の名前のカードを作り、表示を見ないでその色の口紅を探しましょう。

 

口紅を複数用意する。

表示を見ないでその色の名前を考えましょう。

これはメイクをする女性には楽しいワークになると思いますよ。 

わかりにくい文章のサンプルを集める

文章表現の授業の教材を作るには、わかりにくい文章のサンプルが必要です。

選挙を控えたこの時期はまたとないチャンスです。論理的な文章を書くための基本的な技術である「事実を記述する」ということができていない文章が、立候補者のチラシなど*1に豊富に掲載されています。できるだけたくさん集めたいものです。

「事実を記述する」とはどういうことかはこちら↓を御覧下さい。


選挙の立候補者のチラシを用いて次のような授業ができます。

  1. 候補者役と有権者役という役割を決める。
  2. 有権者役の学生さんは事実を表す文章になっていない部分を見つけてマーカーなどでチェックし、候補者役にその部分について質問する。
  3. 候補者役の学生さんは質問に対して具体的に、事実を表す文章の形で答える。

たとえば、

  • 女性が働きやすい環境を整備します!

なら、具体的に何をしてくれるのかよくわかりません。女性が働きやすい環境というのがどのような環境なのかは人それぞれなので、事実を表す文になっていないのです。

  • 保育士の数を25パーセント増やし、待機児童を4年以内に0にします。

なら事実を表す文だと言えるでしょう。数字などを用いて具体的に書くと、内容が誤解されずに伝わります。

これ以外にも、

  • お年寄りに優しい町づくりをします。
  • 財政問題を先送りしません。
  • 被災地の復興最優先で政治運営にあたります。
  • グローバルな人材を送り出せる教育をします。
  • 若者が将来に夢を持てる日本を作ります。
  • 消費税の増税分は全額国民に還元します。
  • 原発依存度は可能な限り低減させます。
  • 地方自治体の自立を促します。
  • 政治にビジネス感覚を取り入れます。
  • 雇用問題を抜本改革します。

というように、大量にサンプルを集めることができます。「財政問題を先送りしません」の場合、「財政問題」は具体的に何か、「先送りしません」というのはいつ何をするのかを伝えていません。こういうサンプルを集めていると、政治家はもしかするとわざと事実を表す文にしていないのかもしれないと思えてきます。 

*1:そのまま使用すると特定の候補者を批判したり支持したりしているとの誤解を招きかねませんので、加工して架空の候補者のチラシを作成するのがいいかもしれません。

後期第4回 まともな情報の集め方

少し分量のある意見文を書くときは、自分の文章だけでなく資料を引用することが多くなります。引用する資料が意見を補強するものとして効果的に使われていればいいのですが、学生さんの提出物では残念なケースもよく見られます。

そこで適切な資料を見つけてくる練習を後期の意見文*1の課題にしています。粗々書いた意見文を添削の上いったん返却して、どのような資料が必要か自分で考えて見つけてもらうのですが、この授業の進め方がなかなか難しいので悩んでいます。

  1. 適切な資料を見つけることができた。
  2. 資料を探したが見つからなかった。
  3. 探すべき資料が何なのかわからない。

2の状況の学生さんの具体的な質問を汲み上げて対応したいのですが、遠慮がちな学生さんが多いクラスでは結果的に締め切り間際に質問が集中し満足いく対応ができないでいます。“ノリ”のいい学生さんの多いクラスはうまくいくのですが……

また、添削しているにも関わらず、3の学生さんも多く見られます。

 

数回を費やして資料を自分で見つけてもらうのは、まともな資料(情報)を集める技術が文章の引用だけでなく人生のあらゆる場面で必要なものだからです。就職に際して希望する職種について調べるとか、留学先の外国のことを調べるとか。

意見文の課題の1つを理系寄りの話題にしているのは、文系の学生さんが相手なので、理系の資料を探す能力を身に付けてほしいと思っているからです。たとえば何かの病気に罹ってしまったら、インターネットや書店・図書館の医学コーナーでその病気を調べることでしょう。インターネットの情報は玉石混淆ですし、書店や図書館の医学のコーナーには、たいてい西洋医学の本だけでなく、東洋医学や伝統医学、民間療法の本などが一緒に置かれています。トンデモ科学に引っかかることなく、確実に信頼できるものを探し出せる嗅覚を身に付けてほしいのです。大学を出てから一生病気にならない人はまずいないし、命にも関わるかもしれない問題ですからね。

というわけで、まともな理系の情報の集め方を説明するのに非常にいい教材が

usausa1975さんの 「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター - うさうさメモ です。usausa1975さん、ありがとうございます。

ポスターの項目のうち、5の推測表現については「事実を表す文」の練習で身に付いています(はずです)が、相関関係やら対照実験やら盲検試験やらは文系の学生さんには説明が必要でした(高校までで学んでいるはずなのですが……)。

*1:前期の授業で意見文を課題にしたときは引用する資料をこちらで用意しました。

レポートはどのくらい負担になるか

大学で初めてレポートを書いてみた1回生はどんな感想を持ったのだろう?――後期の第1回目の授業で、ごく簡単なアンケートをしました。レポートがどのくらい負担になっているのか、苦労しているのはどんな点かを知りたかったのです。アンケートの結果と学生さんと雑談した内容をまとめておきます。

 

1.前期にレポートを何本書きましたか

 2本…1名、2~3本…2名、3本…4名、4~5本…2名、5本…4名、7本…2名

既に忘却の彼方という学生さんも多く、回答があった分もはっきりした数字ではないですが、4~5本が多かったようです。

 

2.レポートの字数を教えて下さい。

これは科目によって違ってくるのは当然ですし、字数を指定しているものと自由に書いたものを区別しませんでしたので、そもそもデータをとる意味がないようなものですが、他の科目でどのくらいの長さのレポートを書いているのか気になっていたのでした。

 500字…1名、600字…3名、700字…1名、800字…2名、

 1000字…1名、1200字…6名、1300字…1名、1500字…3名、

 2000字…5名、1200~2000字…1名、2000~2500字…1名、

 4000字…2名、6000字…1名

1200字や2000字、つまり原稿用紙3枚か5枚という指定が多かったようです。字数が自由の場合、10枚以上書く学生さんもいることがわかりました。

私自身の担当科目もそのようにしたのですが、A4用紙1枚(5名)、A4用紙3枚(2名)という、字数を指定していないものもありました。 

 

3.レポートの課題はどの程度負担になりましたか?

「負担ではなかった」という学生さんはおらず、「ある程度負担になった」「非常に負担だった」が共に7名(未記入1名)でした。

 

4.どのような点が負担になりましたか?

「面倒」「しんどい」という正直な?回答は、「字数が多い」「長い文章を書くのがしんどい」ということのようです。 コピペを防ぐためか、手書き指定や教室で試験形式で書くレポートがあり、パソコンに慣れた学生さんは書くことそのものが疲れるということでした。

「時間的に負担」「授業終了間際にまとめて課題が来る」「本数」といったスケジュールがキツイという声や、「授業内に記入しなくてはならない場合、時間が足りなかった」というのもありました。

どれくらい負担になるかは「課題に対する基礎知識・興味・情報がない場合、書き始めと結論が思いつかない」と科目によって違い、苦手な科目は「参考文献の内容が難しすぎるときがある」ので負担度は増すようです。

レポートの「書き方がわからない」というのは前期にそのための授業を担当した身としては非力さを思い知らされる感想です……。「何を書いたらよいか迷う」「自分の考えをどうアプローチしていくかに悩んだ」というのもありました。

「テーマに沿った内容を考えるのが大変」というのは「テーマが広すぎてなにをかけばいいのかわからなくなる」のかもしれません。後期はより実践的に字数に見合ったテーマの絞り方を取り上げようと思います。

 「字数が足りない」というのもありました。800字のレポートを提出した学生さんです。

 

5.レポートの書き方でよくわからない点があれば書いてください。

「始めと終わりの書き方」、特に「出だしに何を書けばいいのかわからなかった」。パソコンを使えば思いついた順に書くことが出来るのですが、教室試験の形での手書きレポートは困ったようです。

「引用の仕方」「具体的事例の持ち出し方」は、前期はちょうどSTAP細胞がらみのニュースが飛び交っていた時期だったこともあるでしょう。

表記面では「文字数の数え方」が気になるようです。「タイトルや副題も含むのか」「注や参考文献の字数は数えなくていいのか」といった即解決できる疑問の他に、パソコンを使って純粋に文字数だけをカウントしたものと400字詰め原稿用紙を単位として数える文字数の違いに戸惑う学生さんが多いのが目立ちます。原稿用紙の世代の担当教員が400字詰め原稿用紙5枚のつもりで2000字を指定しても、学生さんは文字数だけを数えているかもしれませんので、字数指定には注意が必要だと思いました。

「読点をどこで打つのか。文脈か息づかいか」「カッコの使い方」「どこで改行するか」というのもありました。

 

6.レポートの書き方で練習したい点があれば書いてください。

5.で「自分の意見の書き方」と書いた学生さんが「自分の意見と対立する意見にもそれぞれメリット・デメリットがある。意見を決めかねることが多い」ため「意見を決定する仕方」を練習したい点として書いていました。

「レポートの構成」「文章の流れ」は「トピックセンテンス」とも関連するようです。5.で「改行」と書いた学生さんが6.にも「改行」を書いていましたが、これも文章構成やトピックセンテンスと関わってくることのようです。

 

後期はレポートの課題として出される大きなテーマを細分化し、問題を絞って書く技術を取り上げようと思いました。どうも大きなテーマのまま格闘してよくわからないまま終わってしまったというケースが多いように見受けられました。

また、提出物をチェックするときに個別に朱を入れているのですが、表記上の具体的な約束事も取り上げる方がいいかもしれないと思いました。