文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

情報の重要性をわかってもらうゲーム 改良版

学生さんに情報の重要性をわかってもらうためのゲームを紹介します。もともとTwitterで話題になったゲームをもとに、入手した情報が勝敗を左右するようにアレンジしました。

ゲームの進め方は次の通り

  • 政府1人、マスコミ2人、残りは3~5人程度のグループに分かれます。1つのグループを1つの企業とします。
  • 政府は折り紙を管理し、マスコミや企業に配ることができます。
  • マスコミは「情報」を管理し、政府や企業に売ることができます。
  • 企業は折り紙で鶴を折ります。鶴がお金になります。お金の使い方は自由です。別の企業から人を引き抜いても、雇っても、鶴や折り紙を買ってもかまいません。
  • たくさんお金を持っている企業の勝ちになります。

政府役はちょっと退屈なので講師が務めてもいいと思います。

マスコミ役の人は情報を作ります。折り紙に書いて、見えないように折っておくのがいいでしょう。情報は売れますので、高いほど重要なものにするのがコツです。例えばこんな感じです。

  • 鶴1羽で交換:タピオカおいしい
  • 鶴3羽:この情報を持っている企業は他の企業の青い鶴をもらえる
  • 鶴3羽:この情報を持っている企業は他の企業の社員1人をもらえる
  • 鶴5羽:○時○分に株価が暴落して、鶴の半分を政府に没収される
  • 鶴10羽:○時○分に革命が起きて、一番鶴の少ない企業が全ての鶴をもらえる

鶴を折るのを分業にしたり、得意な人を引き抜いたりということも勝敗を左右するのですが、情報の大切さを知ってほしいため、マスコミ役の人に活躍してもらうところが、参考にしたゲームと異なるところです。

今年度は課題を早く終えた人たちでゲームをしたのですが、みんなゲームの意図をよく理解してくれて、重要な情報ほど手に入りにくいように進めてくれました。企業同士で情報を売って共有したり、マスコミと政府が癒着したりして、なかなか楽しかったです。

 

いまはスマホさえあれば誰でも無料でたくさんの情報を手に入れることができます。しかし、何も考えずにただ情報の波の中に飛び込んで、信じてしまうのは危険です。

大学で学ぶなどして学問的なトレーニングを受けてこそ手に入る情報があり、多くの場合、そのようにして手に入れた情報こそ価値があることに気付いてほしいと思います。

 

 

もとのゲームについてtogetterにまとめられていました。@konbuwasabi さんのアカウントは今は使われていないようです。

togetter.com

本も出ています。

masudanoriko.hatenablog.com

 

本が出ます

いつもこのサイトを見て頂いてありがとうございます。

文章表現の授業を元にした本、『伝える伝わる文章表現』が出ます!

4月1日刊行ですが、Amazonではもう予約できるようです。

書籍のご案内 | 株式会社ケイエスティープロダクション

 

  •  第0課 横書きで日本語を書く

基礎編

  • 第1課 具体的に伝える(1)
    【課題】イラストの説明文を書く
  • 第2課 事実と意見という考え方を理解する(1)
    【課題】マグカップをフリマに出品する文章を書く
  • 第3課 段落に分けて書く
    【課題】じゃんけんの説明文を書く
  • 第4課 トピックセンテンスを使って書く(1)
    【課題】ファストフードの説明文を書く
  • 第5課 引用して書く
    【課題】血液型による性格判断について説明文を書く
  • 第6課 構成を考えて書く(1)
    【課題】救急車の有料化について意見文を書く
  • 第7課 文章を要約する
    【課題】エッセイを要約する
応用編
  • 第1課 メールを書く
    【課題】遅れた課題を受け取ってもらうためメールを書く
  • 第2課 具体的に伝える(2)
    【課題】子供食堂を見学した記録を書く
  • 第3課 段落を分けてトピックセンテンスを使って書く
    【課題】バッグクロージャーの説明文を書く
  • 第4課 事実と意見という考え方を理解する(2)
    【課題】夏の甲子園ナイトゲーム化について意見文を書く
  • 第5課 読む人を意識して書く
    【課題】外国人の住むマンションに配布するお知らせを書く
  • 第6課 自己アピール文を書く
    【課題】エントリーシートを書く
  • 第7課 構成を考えて書く(2)
    【課題】入れ墨(タトゥー)がある外国人観光客の温泉利用について意見文を書く
 
問題集の形ですが、【練習】【課題】に【解答例】と【解説】を付けました。
1つの章が90分授業1回の内容です。
事実と意見を区別することと、段落とトピックセンテンスを重点的にとりあげています。
応用編第7課で、資料を引用して1000字の意見文が書けることを目標にしました。
イラストの説明文バッグクロージャーの説明文は、盛り上がるので授業でよくとりあげていました。ぜひ試していただきたいです。
テキストとして教室で使うときは、早くできた学生さんが退屈することなく考えを深められるように、現在の社会で重要なテーマを選びました。

文章の書き方には正しい1つの答があるわけではないので、解答がないテキストもよくあります。私自身、授業でそういうテキストを使っていますが、解答例がないのに困ることもありました。そこで、学生さんの提出物も参考にして解答例を作りました。
また、一人で勉強することもできるように、解説も書きました。
 
文章表現の授業をしながら、こんなテキストがあればいいのにと思っていたものになりました。1つだけ嫌がられそうな点は、“必ず手を動かして実際に書いて練習してほしい”と要求しているところです。大学生、専門学校生、やる気のある高校生、記録や報告の文を書く社会人の皆さんにぜひ手にとって頂きたいです。どうぞよろしくお願いします。

事実と意見の区別に関する本や動画

論理的な文章を書くために必要な「事実」と「意見」を区別するという考え方ですが、学校の国語の時間で勉強した記憶がないと言われます。

しかし、既に平成20年の学習指導要領「生きる力」第2章 各教科 第1節 国語 (今の大学生はこの学習指導要領で学んでいますよね)では第3学年及び第4学年に以下のように記されています。

C 読むこと

(1) 読むことの能力を育てるため,次の事項について指導する。

(略)

イ 目的に応じて,中心となる語や文をとらえて段落相互の関係や事実と意見との関係を考え,文章を読むこと。

(後略)

第5学年及び第6学年では以下のように記されています。

C 書くこと

(1) 書くことの能力を育てるため,次の事項について指導する。

(略)

ウ 事実と感想,意見などとを区別するとともに,目的や意図に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりすること。

(後略)

C 読むこと

(1) 読むことの能力を育てるため,次の事項について指導する。

(略)

ウ 目的に応じて,文章の内容を的確に押さえて要旨をとらえたり,事実と感想,意見などとの関係を押さえ,自分の考えを明確にしながら読んだりすること。

(後略)

習っているんですね…?

ちなみに私はこの事実と意見の区別を、大学に入学してから、『理科系の作文技術』で知りました。

まだ読んでいませんが、漫画版もあるようです。

最近のものでは『大人のための国語ゼミ』に事実と意見の区別が詳しく説明されています。

この本に付いては過去記事で紹介しています。

masudanoriko.hatenablog.com

いまさら馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないのですが、小学校5・6年生向けのNHKの番組がとてもわかりやすいです。

www.nhk.or.jp

www.nhk.or.jp

www2.nhk.or.jp

高校講座のロンリのちからでも取りあげられています。

www.nhk.or.jp

私はこれらの動画を食事の時に1つずつ見ました。事実と意見について今ひとつよくわからないという人は、隙間時間を利用して復習することをお勧めします。

なぜレポートの課題があるのか

レポートの書き方の参考文献は何がお勧めですかと言われたら、私も戸田山和久氏の『論文の教室』をお勧めします。新版が出てますね。いいなあ、あやかりたい。

 あやかりたいので文体をちょっと寄せて書いてみました。では、どうぞ。

 

 

 教員だってラクじゃない


 レポートの課題が出されて憂鬱なキミに一つだけ知っておいてほしいことがある。レポートというのは、担当教員にとっても負担が大きい存在だということだ。
 たとえば授業内でレポートを課題にすると、当たり前のことだけど添削に時間がかかる。授業時間と同じくらいの時間を毎回添削に費やしたり、休日は添削に追われたりする。
 単位認定を試験ではなくレポートで行うことにすると、試験よりも採点に時間がかかる。時間のことを考えると、選択式の記号問題にするのが一番ラクだ。おまけにレポートは採点の仕方がわかりにくい。時間をかけて採点したあげく学生さんから評価に異議申し立てなどされた場合は、時間的にも精神的にも消耗する。
 そういうリスクを避け手間をできるだけ省こうとするなら、レポートなんて書かせないに限る。学生さんもラクだって喜んでくれるし、添削に追われることもなくなるだろう。
 なんでそうしないかって? それはひとえに学生の皆さんに対する愛! 大学生なんだもの、レポートくらい、まともに書けるようになってほしいという、愛なんですよ!!

 

 楽勝科目には怒るべき

しかしレポートを課す教員の中には、ごく希に(だと、思いたい。同業者としては)だけど、提出さえすれば単位を出す教員がいる。参考文献の丸写しやネットからのコピペでも、見た目だけはレポートの形になっていれば大丈夫。書いているうちに自分でも何のことかわからなくなってるんじゃないかという支離滅裂なものでも、コピペじゃなくて自分の言葉だから偉い偉いと褒めてくれる。単位を取ったキミは「なーんだ、レポートって楽勝だったなー」という感想を持つだろう。
 喜んでいる場合ではないのである!
 そんな、レポートとも言えない代物にあっさり単位を出すということは、その教員がまったくやる気がないか、有り得ないほど低い能力の持ち主かのどちらかである。つまりキミは、大学に授業料を支払っているにも関わらず、真っ当な教育を受けていないということだ。
 もしかしたら、別にそれでもいい、授業料を払って単位を金で買っているのだという人もいるかもしれない。そういう人は楽勝科目ばかりを器用に選んで、最小の勉学で大卒の肩書きを手にすることに価値を見出すのだろう。
 いまどき文章を書くリテラシーを身に付けていない大卒がどれほど危なっかしいものか想像するだに恐ろしいんだけど、まあそういう人は今この文章を読んでいないだろう。
 そういう人にはこの声は届かないと思うけど、楽勝科目には「なんかこれおかしくないか?」「こんな風に甘やかされててレポートが書けないままだとヤバイんじゃないか?」と思ってほしい。

 

 コピペはバレている

レポートの書き方がわからない学生さんがやりがちなのが、インターネット上の記事のコピーアンドペースト、略してコピペである。昔から参考文献の丸写しっていうレポートはあるけど、手軽さの点で勝っているからだろう、最近は圧倒的にこのコピペってやつが多い。
 コピペをしてもバレないと思っている学生さんがいる。参考文献はともかく、ネットの記事なんかセンセイは知らないだろうと思っているのだ。
 んなこたあ、まず有り得ない。今の五十代以下で大学の教員にでもなるようなのは、同じ世代の中でも日常的にパソコンを使ってきた人間がほとんどだ。2ちゃんねるの誕生に立ち会い、タグを打ちながらホームページを作り、グーグルがない時代によろずのことを検索していたのである。専門関係のサイトは当然巡回している。キミがコピペしたWIkipediaの記事だって、書いたのは実は授業を担当した教員かもしれない。
 まあ何事も例外はあるからパソコン音痴の先生もいるけれど、たいていの場合、キミがふつうのキーワードで検索して辿り着く記事くらい、我々はすべて押さえていると考えてもらった方がいい。もちろんエゴサーチもしている。某大学で私が「フェアリー」と呼ばれてることだって知ってるからな!

 

 アレンジしてもバレている

単純なコピペではなく、コピーした記事をアレンジしているレポートもある。二つ以上の記事を合体させたり、文体を変えたりしているのである。こういうタイプもバレているのは言うまでもない。
 友人同士で一つのレポートをアレンジして使い回すというパターンもある。参考文献やネットで引っかかってこないからバレないと思っているのかもしれないが、甘い。
 そもそも大学の教員は研究者でもあるっていうことを忘れてもらっては困る。文章にはリズムというものがあって一旦完成した文章を素人がアレンジすれば必ず不協和音が出る。我々は、その気になればキミたち素人のアレンジしたレポートを分類して、たちどころに系統図を作ることだってできるのだ。

 

 書く技術を身に付けよう

レポートを書く技術が必要になるのは、なにも単位を取るためだけではない。ちゃんとしたレポートが書けるってことはつまり、ある程度の長さのまとまった文章、説明文や意見文や報告書といったものが書けるっていうことだ。
 文章を書く技術は、ある時はキミの人生を豊かにしてくれるし、またある時はキミを守ってくれるだろう。
 インターネットの登場で、プロではない人たちが文章を発表する機会は格段に多くなった。個人でSNSやブログを書いたり、クラブや趣味のサークルでサイトを運営したりすることはもはやふつうのことだ。ネット上にアップされた文章は、閲覧制限をしない限り全世界の人が閲覧できる。文章を書く技術が身に付いていれば、筆一本(ではなくキーボードか)でキミの世界は大きく広がるのだ。
 反対に、ちゃんとした文章を書けないと損をする。例えば仕事をしていて業務の記録や報告書などの文章はさっさと書けるに越したことはない。それにいまどきは、いったん職場で問題が起きれば、情報開示の流れを受けてキミの書いた書類が表に出ることがある。ここできっちりした文章の書き方ができていないと、不利な状況に陥ったり、場合によっては損害を被るかもしれない。
 だからこそ、大学生の今のうちに、レポートの書き方、ものを書いて発信する技術を、身につけるべきなのだ。誤解されないわかりやすい文章を書く技術は、これからの人生でキミの身を守り、チャンスを引き寄せるツールになるだろう。

「型」に従って書くことについて

 

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実際に使ったシート。

夏の甲子園ナイトゲームにするべきだ」という意見について、賛成・反対両方の文章を書きました。この写真は賛成バージョンです。

意見文や報告文などには、よく使われる型があります。意見文をどうしても書けないという学生さんのために、その型を用いて穴埋めシートを作ったことがあります。「意見文の書き方」に記したアウトラインを元にしました。

文章を書けないのは、自分の考えていることを表現する回路ができていないからだと思います。書ける人は、これまでにお手本となる文章をたくさん読んでいて、その回路ができあがっています。しかし読書経験があまりなかったり、読んでいても(自分の考えていることを上手く伝えるには、このように書けばいいのか……)などと意識することがなかったりすれば、この回路ができません。

文章表現を磨くためには読書が一番というのは、だいたい正しいと思いますが、例えば数ヶ月後にレポートを提出しないといけない大学1年生にそういうアドバイスをしても絶望されるだけです。

そこで、型を用意して埋めて書く練習をしてもらうわけです。

この練習は、書けない学生さんには好評なのですが、書ける学生さんにはいまひとつです。書ける学生さんはこういった型にはめられるのを嫌がる傾向があるからです。

しかし、型を使って書く練習は、文章に自信のある学生さんにも必要だと思います。これまでの読書を通じて自然にできた回路が、個性的すぎてふつうの読者にはわかりにくいところがあるかもしれません。一見つまらない、ふつうの型を使うことによって、粗削りの型を修正することができます。

論文などにはその分野の型があって、それに従わないと不利になりますし、文章を書く仕事でも、このように書いてほしいという型の指定があります。好きなように文章を書く機会は他に作れるのですから、指定される型に素直に自分を委ねてみるのも、わかりやすい文章を書くためには大切な練習だと思います。

masudanoriko.hatenablog.com

文章を長くする

 長い文章を書くとき、皆さんはどうしているでしょうか。いきなり書き始める、書きながら考えるという人もいますが、ここではアウトラインを作って書く方法を紹介します。
「アウトライン」という言葉はいろいろな分野で使われていますが、文章を書く際には、文章の構造、骨格のことをいいます。例えば、意見文のアウトライン を簡単に作ってみると、以下のようになります。

  1 話題(事実を表す文の形で書く)
  2 1に関する自分の意見
  3 2の理由
  4 予想される反論と、それに対する反論

「夏に行われるいわゆる高校野球ナイトゲームにするべきだ」という意見文を、このアウトラインを使って書いてみましょう。

 毎年8月の猛暑の中、阪神甲子園球場全国高等学校野球選手権大会が開催されている。
 私はこのいわゆる高校野球ナイトゲームにするべきだと思う。
 なぜなら、この暑さの中で野球をすると熱中症になる危険性があるからだ。
 夏の日差しの元、汗を流して一心にボールを追う姿こそ高校野球の醍醐味だと言われるが、最近の暑さはそのようなことを言っていられるものではない。生徒を熱中症から守るために、高校野球ナイトゲームにするべきだ。

これでほぼ200字(204字)になりました。

 さて、このテーマでレポートを書く課題が出たとします。先ほど、何も調べずに意見文を書くと200字程度になることがわかりました。これでは要求された字数にまったく届きませんので、アウトラインを見直します。
 先ほどの1~4のアウトラインを元に増やしていきますが、

  1 話題
  2 1に関する自分の意見
  3 2の理由
  4 予想される反論と、それに対する反論
  5
  6…

と増やすのではなく、1~4を下記のように枝分かれさせます。

  1 話題 高校野球とは
  2 意見
  3 理由
    3-1 理由
    3-2 理由を裏付ける引用
  4 反論に反論
    4-1 反論
    4-2 4―1に反論

 このアウトラインを使って、先ほどの200字の文章を書き直してみましょう。

 毎年8月の猛暑の中、阪神甲子園球場全国高等学校野球選手権大会が開催されている。各都道府県から選ばれた合計49校が、トーナメント方式で競い合うこの大会は「夏の甲子園」と呼ばれ、テレビやラジオで放送される夏の風物詩になっている。
 私はこの夏の甲子園大会はナイトゲームにするべきだと思う。
 なぜなら、この暑さの中で野球をすると熱中症になる危険性があるからだ。実際に熱中症になった例がある。2015年8月9日「スポニチアネックス」の記事(酷暑の甲子園 選手はけいれん、観客は熱中症 次々救護室へ)によると、津商(三重)の坂倉誠人投手、創成館(長崎)の中島崇二塁手熱中症で交代している。涼しい夕方からゲームを開始すれば、このようなことは起きないだろう。
 選手はずっとマウンドにいるわけではないし、ベンチにいる時間を有効に使って水分補給を適切に行うなど、熱中症対策をすればよいと思われるかもしれない。
 しかし、甲子園にいるのは選手だけではない。観客もまた、屋根のない座席で熱中症の危険にさらされているのである。前述の記事にも「熱中症や日射病で救護室に行った観客は8日に61人、9日に42人になった。一時は部屋に入りきらない状況になったという」とある。観客の中には選手を応援しようとやって来た祖父母や幼児もいることだろう。
 生徒だけでなく、観客も熱中症から守り、より素晴らしい大会にするために、高校野球ナイトゲームにするべきだ。

これでほぼ600字(603字)になりました。
 600字程度になると、自分の言葉で書いた部分以外に引用を1つ入れることができます。ここでは新聞記事を引用しましたが、自分の意見の説得力を強めるための引用を入れるとよいでしょう。
 さらに長い文章、例えば800字程度にするときは、下記のように3の理由を増やすとよいでしょう。

  1 話題 高校野球とは
  2 意見
  3 理由
    3-1 理由その1
    3-2 理由を裏付ける引用
    3-3 理由その2
    3-4 理由を裏付ける引用
  4 反論に反論
    4-1 反論
    4-2 4―1に反論

 またさらに長い文章、例えば1000字程度にするときは、下記のように4反論に反論を増やすとよいでしょう。

  1 話題 高校野球とは
  2 意見
  3 理由
    3-1 理由その1
    3-2 理由を裏付ける引用
    3-3 理由その2
    3-4 理由を裏付ける引用
  4 反論に反論
    4-1 反論その1
    4-2 4―1に反論
    4-3 反論その2
    4-4 4―1に反論

 より長く、例えば1200字程度にするのなら、1も詳しく書けます。

  1 話題
    1-1 高校野球とは
    1-2 高校野球の歴史と夏の気温
  2 意見
  3 理由
    3-1 理由その1
    3-2 理由を裏付ける引用
    3-3 理由その2
    3-4 理由を裏付ける引用
  4 反論に反論
    4-1 反論その1
    4-2 4―1に反論
    4-3 反論その2
    4-4 4―1に反論

 このように、字数を増やす場合は単に長く続けるのではなく、アウトラインをどうするか考えて、必要な部分でバランスよく増やすようにしましょう。

メールの書き方2 具体例

 

前回に続いて、よくあるメールを例に挙げ、具体的にどのように書けばいいのかを考えましょう。

Title 生物学入門Ⅰ

 

三好先生

学籍番号1573-916の浅倉です。授業中、Wifiの調子が悪くて課題が出せませんでした。よろしくお願いします。

メールに限らずすべての文章をわかりやすく書くには、それを読む人の立場を想像してみるといいと思います。ここではこの三好先生の立場を想像してみます。

  • 今日もたくさんメールが届くなあ。(数十通の件名を見て)「生物学入門Ⅰ」?何だろう、単に科目名だけだし、急ぐ用件ではなさそうだな。こっちは「明日8日の授業内発表について」か、これはすぐ返事を書かないと。
  • ゼイゼイ やっとメールの返信が終わりそうだ……「生物学入門Ⅰ」ね、浅倉さんってどの浅倉さんだろう? どこの大学かな、学籍番号っていうからカルチャーセンターの生徒さんではないみたいだけど。
  • 「生物学入門」の受講生か。この課目は4クラスあるんだよな。(全部で100人くらいの名簿を見て)「うう……ずっとモニター見てるから目がしょぼしょぼする、〇曜日〇限の生物学入門Ⅰを受講しています」と書いてくれたら、すぐに対応できるのになあ。
  • Wifiの調子が悪い」ってどんな風に調子が悪かったんだろう? ずっと途切れがちだったのかな、聞けてたところはあるのかな? 後半で課題のやり方の説明をしたけど、それは聞けたのかな?
  • 「よろしくお願いします」って言われても……。どうしたいんだろう?
  • 課題を今からでも出そうと思ってるのかな? そうだとしたら、どのくらいできてるんだろう? いつ出せるのかな?
  • 今からでも出せますよって返信して、どのくらいできてるのか、いつ出せるかを聞かないと……。LINEのやりとりでないんだから、1通で済むようにしてほしいなあ。

いまどきの遠隔授業に対応している講師はだいたいこういう状況にあると思いますので、メールは次のように書いてもらうと非常に有り難いです。

Title 7月15日生物学入門Ⅰの課題について

 

三好先生

 

長岡大学1年の浅倉景です。水曜日1限の生物学入門Ⅰを受講しています。

 

今日(7月15日)の授業中、Wifiの調子が悪くて課題が出せませんでした。9時半くらいから安定しなくなり、何度もZoomの入退室を繰り返していました。みんなが課題をしていたときも何をすればいいかわからないので、チャットで尋ねようとしたのですが、途切れてしまいうまくできませんでした。

 

今からでも課題を提出することは可能でしょうか。また、提出できる場合、遅延扱いになるでしょうか。

 

今日のテキストはダウンロードしてあったので、授業中に読んで内容はだいたい理解しました。今日の午後は授業がありますが、夜には課題に取り組むことができるので、明日までには提出できると思います。

 

お忙しいところお手数おかけしますが、よろしくお願いします。

―――――――――――
浅倉 景 ASAKURA Kei
1533@nagaoka-u.ac.jp
090 0924 0820
―――――――――――

このように書いてもらうと、以下の点で有り難いです。

  • 段落分けしているので目に優しい。

  • 「今日(7月15日)の授業中、Wifiの調子が悪くて課題が出せませんでした」「今からでも課題を提出することは可能でしょうか」という段落冒頭のトピックセンテンス、「明日までには提出できると思います」という段落最後の文で流し読みしても内容がわかる。

  • 「今日」ではなく「今日(7月15日)」とあるので、日付が変わってもいつのことかわかる。

  • タイトルを見ただけで内容がわかり、返信の優先順位を決められる。

  • 誰からのメールかわかり、すぐに対応できる。

  • Wifiの調子が悪くて課題が出せませんでした」をトピックセンテンスに、どう調子が悪かったのかを具体的に説明している。そのため、授業内容のどの部分を伝えないといけないかがわかる。

  • 「今からでも課題を提出することは可能でしょうか」という要望がすぐわかる。

  • 課題の進み具合の状況、いつまで待てばいいのかわかる。

最後の「お忙しいところお手数おかけしますが、よろしくお願いします」はメールの決まり文句です。

 

署名に個人情報をどこまで書くのかは慎重になるべきですが、ここでは漢字とローマ字表記の名前・メールアドレス・携帯番号にしました。ローマ字表記は振り仮名の役割も果たしています。めったにないと思いますが、極めて緊急の場合なら、携帯番号もあれば安心です。

 

メールの書き方については本やサイトがたくさんあり、多くの大学では、学生さんから教員に向けたメールの書き方について説明したサイトがありますので、大学生の皆さんは、まずはそれを参照しましょう。

ただ、それらは主に専任の教員を対象に考えて作られているように思います。非常勤講師の場合は複数の大学に出講している場合も多いので、大学名を書いてもらえると大変有り難いし、早く対応できます。学生さんに、メールを送る講師が非常勤かもしれないから気を遣って書けというのは申し訳ないのですが、社会人になってさまざまな人とメールをやりとりする練習だと思ってもらえれば幸いです。

 

メールの書き方についても取り上げています。