名著『論理トレーニング』の筆者である野矢茂樹氏による“国語ゼミ”。「論理国語」という科目から私がイメージするのが、まさにこういう内容です。
期待通りの内容ですが、ここでは第2章「事実なのか 考えなのか」、論理的な文章を書くためには必須の考え方、「事実と意見」を区別するということについての本書の内容を取り上げましょう。
日本ではおそらく『理科系の作文技術』から広まったこの考え方は、多面的な事実を扱う文系の学問には当てはめにくい部分がありました。その点、本書は文系の読者にも目配りが利いているのがありがたいところです。1つの事実を複数の表現で表す練習は、これまでもよく行われていたと思いますが、こうして「事実と意見」の流れの中で捉えるとその意味がよく分かり、理解が深まるでしょう。
本書では「事実と意見」の2つに分けるのではなく、「事実・推測・意見」の3つになっているのも特徴です。まず「事実と考え」の2つに分け、「考え」を推測と意見に分けています。この分け方はとてもわかりやすく、これまで「意見」という専門用語に馴染めなかった人にもわかってもらえるのではないでしょうか。
「事実と意見」については私も文章表現の授業でしつこく伝えているのですが、いつも参考文献としてあげている『理科系の作文技術』では今ひとつわからないという学生さんに勧めたい一冊です。
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事実と意見の区別には批判的な意見もあります。私の考えを書いておきました。
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事実を記述する練習の教材で、人物の性別を書かせるのは問題があるかも知れないと思うようになりました。このことについては考え中です。
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*199頁(4)については少し心配になった。焼きじゃがいもに味噌のようなこともあるので。
*202頁8行目のような表現はしてはいけないと思う。