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文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

後期第8回 自己アピール文を書く その1

文章表現の授業では、学生さんのニーズに応えて、自己アピール文の書き方を取り上げています。奨学生に応募する書類を書いたり、就職活動のエントリーシートを書いたりする書き方がわからないというわけです。具体的な書き方は専門のスタッフの方がおられるので、授業ではその前段階の基本を押さえます。

こういう書類を抱えた学生さんが相談に来ることがありますが、下書きを見せてもらうといつも驚いてしまいます。いざこういう書類に向かうと、何か不思議な力が働くのでしょうか。何故か今まで授業で学んだことを全く使わないで書いてしまうのです。

授業では、次のような設定で奨学生に応募する文を書く練習をしています。

こども絵本協会の「グリム奨学金」に応募するため、志望理由書(400字)を書く。

こども絵本協会は子供たちに良質な絵本を届けることを目的とする団体で、保育所・幼稚園に絵本を寄付する活動を行っている。この他に、新人絵本作家の登竜門グリム賞を主催しており、その授賞式は毎年テレビニュースでも放送されている。
グリム奨学金はこども絵本協会が経済的に困窮している大学生を支援する制度で、卒業まで月5万円の奨学金が支給される。
応募条件は将来、子供に関わる仕事を志望していることと、保護者の収入が一定金額以下であること。保護者の収入については証明書を提出する。

まず何も説明しないで書いてもらうと、情緒に訴える文章がほとんどになります。「父がリストラされて家計が苦しいです」「母子家庭で母には苦労をかけています」「父が家にお金を入れてくれません」「私はブラックバイトで鬱になりました」……(あくまで文章を書く練習なので、これらが本当のことを書いているとは限りません。)

審査する人の同情を買うと採用されるのでしょうか。「母子家庭で苦労をかけた母に楽をさせてあげたい」という気持ちは立派です。しかしなぜその団体があなたの親孝行に協力する必要があるのでしょう。こういった応募は別に収入証明を出したりしますから、経済状況はそれで把握できます。奨学金は一番可哀想な人に支給されるものではありません。

長年、奨学金申請書類の添削をしてきた方に伺いますと、その学生さんの可能性が伝わる文章を心掛けているそうです。奨学金は支給する団体が望む人材に成長する可能性がある人に支給されるということですね。

まずは、支給する団体について情報を集め、どのような人材を望んでいるのかを考えましょう。そして、自分が将来そういう人物になれるということをアピールするのです。書き方としては、授業でこれまで学んだように、具体的に事実を書くということを心掛けるといいと思います。例として、必ずといっていいほど出てくる次の文を見て下さい。

奨学金を頂いたら、きっと勉強を頑張ります。

頑張るというのは人によって感覚が違いますから、ある人が見てサボっていると思っても、本人は頑張っているのかもしれません。これはいわゆる「事実を表す文」ではありません。

奨学金を頂いたら、現在週5日のアルバイトを3日にできます。空いた時間をピアノのレッスンに当て、保育士としてのスキルを磨くつもりです。

と具体的に書いた方が、奨学金を有効に使うことが伝わるのではないでしょうか。

この他に、内容ごとに段落を分け、トピックセンテンスを生かして書くのはもちろんです。応募書類が殺到したとき、最後まで読まないと内容がわからない文章は損をします。自己アピール文の場合も、次の基本を忘れないようにしてください。

  1. 具体的に事実を書く
  2. 内容事に段落に分ける
  3. トピックセンテンスを効かせて書く