文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

後期第5回 まともな情報の集め方 続き

今回のレポートは臓器売買がテーマでしたので、医療関係の書籍の資料を多く集めました。このような専門的な資料の場合、次のことをチェックした方がいいでしょう。

  • 出版社 いまどきの出版社はふつう自社のサイトを持っているはずです。調べましょう。医療専門の出版社なら、当然、出版物の信頼度は高くなります。そうでない場合はその出版社が他に出している医療分野の本にどのようなものがあるかをチェックしましょう。『○○で癌がみるみる治った』などという本ばかり出していたら、注意した方がいいでしょう。
  • 著者 著者のプロフィールをチェックしましょう。その本に載っていなければインターネットで調べましょう。「博士(医学)*1」という学位は医師免許の有無とは関係しませんが、医学博士=医者だと思われがちです。この思い込みを利用して医者ではないのに医者であるかのような印象を与える著者は信頼できないと考えてよいと思います。また、学位を持っていて CiNii Articles - 日本の論文をさがす - 国立情報学研究所 で論文が1件もヒットしない著者も心許ないと思います。
  • 関連団体 医療関係の書籍の場合、著者と関係のある団体の利益になるような本がたくさんあります。出版社自体がその団体のPRのために作られているようなところもあります*2。これもインターネットですぐに確かめることができます。

これはどの分野の資料を集めるときも気を付けるべきことと思います。授業で学生さんが集めてきた資料を持ち寄って、みんなでチェックしてみるとよいと思います。

参考文献のコピーをとるときは、見返しもとっておくとよいでしょう。見返しには著者・出版社・刊年など、その本の情報がすべて書かれています。こういったデータはコピーに手書きで書き込む人が多いようですが、見返しもコピーしておくと写し間違いの心配もなく、参考文献リストを作るときに情報が足りなくて慌てることもなくなります。大学院時代、先輩に教えてもらって今も続けていることの1つです。

*1:肩書きとしては「医学博士」と書くこともあります。

*2:「『ダメな科学』を見分けるための大まかな指針」にも「利益相反」という項目がありました。