文章表現の授業です

専門学校や大学で担当している「国語表現法」「日本語表現」などといった授業の覚え書き

第10回 インタビュー

大学の文章表現の授業ではインタビューについてとりあげます。第5回で引用について取り上げましたが、引用は参考文献だけでなく誰かから聞いた話からすることもあるからです。本格的なインタビューをするレベルまではいかなくても、取材に行くときの最低限のルールを身に付けておく必要があります。

具体的には、次のような内容をハンドアウトにして配布し、授業内で簡単な「インタビューごっこ」をしています。

 

  1. インタビューを申し込む 対面・電話・電子メール・手紙・その他
  2. 予習をする 調べておくこと、読んでおく本のリストを作る。その人について、またインタビューでその人に尋ねるテーマについて、予習しておく。
  3. 質問のメモを作る
  4. 持っていくものを用意する 鉛筆またはシャープペンシル(仕事場でインタビューするときなど、インクで周囲を汚すことのないようにペン類は避ける)・メモ用紙またはノート(立ったままメモをとれるので固い表紙のものがおすすめ)・カメラ・レコーダー(録音していても固有名詞や数字は必ずメモを取る。漢字はその場で確認しておく)・その他
  5. インタビュー相手に確認すること  テープを使っていいか(相手が快諾してくれても場所によっては使えないこともあるので注意)・写真を撮っていいか(同上)・提出前にチェックが必要か(インタビュー相手にチェックしてもらうことになった場合、締め切りがあることを十分理解してもらうこと)・その他の制限(聞かないでほしいこと、話の流れで話してしまったが書かないでほしいということがないか、開始前と終了時に確認する)
  6. テープ起こしをする まず一字一句正確に文字に起こす→全体の中で使うところ、削るところを決める→使う箇所の文章を加工する(方言・口癖をどのくらい再現するか?・語尾の扱い(必要に応じて「?」「(笑)」などを使う)・間違った言葉遣いをどうするか?)
  7. レポートにまとめる
  8. 原稿のチェックを依頼する
  9. お礼をする(当日夜にお礼のメールか葉書を書く、完成後にお礼状とレポートのコピーを郵送する)

神戸山手大学では前期の最終課題がインタビューなのですが、家族や友人以外、できれば初対面の相手にインタビューをしてくることになっています。インタビューを受けて下さった例では次のようなものがありました。

  • 大学周辺のよく立ち寄る喫茶店。個性的な店なので経営している人の話を聞きたい。
  • 大学周辺のNPO法人。活動内容に興味があった。
  • サークルの先輩・母の友人・友人の友人で既に働いている人を紹介してもらう。社会人の生活を聞きたい。
  • 趣味でよく行く店の店長。自分もそのような店を持つことに憧れているので、開店までのことや店を運営する楽しさ・苦労などを聞きたい。
  • アルバイト先の店長。仕事では話をするがお互いのことはほとんど知らない。
  • 近所の商店街にある店の主人。以前から感じのよい店だと思っていたので、仕事についての考えなどを聞きたい。
  • 母の友人の専業主婦。専業主婦になりたいので実際のところどのようなものかを聞きたい。
  • ご近所で家族の介護をしている方。会釈くらいしかしたことがなかったが気になっていた。
  • 友人の母親。友人との付き合いの中でいい母親に育てられたのだなあと思うことが多かったので、子育てについてどう考えていたのかを聞きたい。
  • 友人の友人。別の大学の学生がどのような学生生活を送っているか知りたい。

インタビューに当たっては、自分の都合で相手の時間を奪うことになるのを十分理解し、失礼のないように振る舞ってほしいのですが、あまりそれを強調すると、いまどきの学生さんの特徴なのか、尻込みして申し込めなくなってしまうのが悩ましいところです。時間は30分前後がほとんどです。店舗を持っている方なら開店前に、社会人の方には昼食をご一緒してインタビューをしたりするなど、それぞれ工夫していました。

また、インタビューの内容は個人情報に関わる部分が多いので、その点の配慮も必要です。レポートはふつうは授業の担当者しか見ないものですが、上記の配布物にあるように書いてもらいたくないことのチェックをする他、必要があれば仮名にしてもらうなどしてもらいます。神戸山手大学では昨年度から公開希望者のレポートを学生が閲覧できるようにしましたが、そこに至るまで保管の仕方や閲覧方法などについて話し合うことがたくさんありました。このように、インタビューの場合は個人情報の取り扱いに関しても十分理解してもらう必要があります。