写真は第1回の授業で使用しているものの一部です。
第1・2回で絵葉書やイラストの説明文を書いていて気付くこと(気付いてほしいこと)の一つに、「詳しければいいというものではない」ということがあります。用意した紙にびっしりと説明を書いているのに、さっぱり絵が再現できないということも起こるのです。
数
大きさ
位置・向き
をはっきり書く必要があるのは大前提として、そういった情報を書く順もわかりやすい説明には重要なことなのです。
思いついたことをただ思いついた順番にだらだら書いてもうまく伝わりません。伝える内容を整理して、最もわかりやすい順に書く必要があります。
そこで第3回の授業では段落の分け方を取り上げます。
ある程度長い文章を書くときは、いくつかの段落に分けて書いていることと思います。せっかく段落を分けているのですから、文章をわかりやすくするために段落を最大限に利用しましょう。「なんとなく長くなってきたからこの辺りで段落を分けよう」というのではなく、「わかりやすくするためにはここでしか分けられない」という唯一の所で分けるのです。
段落の始まる部分では、改行し1字下げて書きます(日本語は歴史的に本来縦書きなので「下げて」という表現を用いますが、横書きの場合は1字右に寄るということです)。これは段落の切れ目をわかりやすくするのが目的です。インターネット上の文章などカジュアルな場面では1字下げになっていないこともありますが(これもそうです)、その場合でも段落毎に行間がやや空いているなど視覚的にわかりやすくなっていることがほとんどだと思います。まず、形式面で段落の切れ目をはっきりさせましょう。
次に、わかりやすい文章にするためには、1つの段落に1つの内容を書くようにするとうまくいきます。たいていの文章では、段落はそれぞれがある程度独立した内容を持っていますが、それを徹底させてみましょう。1~2文からなる短い文章でも1つの段落にしてかまいません。
最後に、その段落をどの順番に並べると一番わかりやすくなるか考えます。
このように書く順番と書く内容を決めてから書くようにしましょう。
たとえば、第1回のゲームで使ったアンティークの絵葉書(右の写真です)の場合、
左下に白い猫が1匹います。
木彫りの犬のおもちゃが1つあります。
犬の上にも猫が2匹います。
犬は向かって右に向けて置いてあります。
猫はふさふさです。
と書くよりも、
木彫りの犬が向かって右に向けて置いてあります。
犬の耳は垂れ、鼻は低いです。
犬の首にはロープがついています。
犬の足にはそれぞれひとつずつ足より小さな車輪がついています。
と犬についてまとめ、その後にまた猫についてまとめた方がうまく伝わります。
(また、冒頭で、
木彫りの犬のおもちゃが1つあり、猫が3匹います。
とまず全体像を伝えると、よりうまく伝わるようです。)
この絵葉書の説明を文章にする場合、
犬について→猫について→背景について
をそれぞれまとめて段落にするとよいというわけです。
このようにある場面について説明する場合、書く順番については、最も重要で伝えるべきものからにするとよいでしょう。絵葉書の1つにJ・Mフォロンの「手のたわむれーーきょう」と言う作品があります(左の写真です)が、この絵を説明するときに、
低い山が連なっていて、四角いビルのような建物が建っています。
と背景の下の部分から書き始めるよりは、
左の手首から先の部分が、向かって右側から左向きに浮いています。
とメインになるものから書き始めた方がうまく伝わります。
それぞれの段落に何を書くかはメモをとりましょう。メモは1枚の紙に書くよりは、付箋や小さく切った反故紙などを使うと、実際に書く順番に並べることができて便利です。
問題1
絵葉書の絵を説明しましょう。
1.説明すべきことを思い付く限り付箋にメモしましょう。
2.どの順番で説明するか、1の付箋を並び替えましょう。使わない付箋があってもかまいません。
3.2を元に説明文を書きましょう。
このようにアウトライン(書く順番)とメモ(書く内容)を使って文章を書くと、字数の指定がある場合に調節ができて便利です。
最も重要で伝えるべきものから書くよりは、時間の流れの順を追って書く方がわかりやすい場合もあります。たとえば次のような場合です。
問題2
問題1と同じ方法で、「割り箸の使い方」の説明文を以下の条件で書きましょう。
一人でもできる課題ですが、せっかくの授業ですので、ぜひグループでメモを作りましょう。自分では思いつかないような材料が出てくるかもしれません。
条件は以下の通りです。
1.割り箸を見たこともない留学生が、日本で生活する上で困らないように説明します。
2.その留学生は一般的な箸も知らないものとします。
3.紙袋に入った割り箸の写真を1枚掲載します。
4.敬体(です・ます調)で。
5.字数は400字程度。
6.以下のアウトラインを用います。
1割り方(使える状態にするまで)
2持ち方(いわゆる箸の持ち方、完璧でなくてもよい。)
3どこで手に入るか
4その他、知っておいた方がいいこと
この説明文の場合、書く人が重要と思うこと(人によって違います)から順に書くよりは、割り箸を使う順を追って書いていくとわかりやすくなります。今回は書く順番のアウトラインをこちらで用意しましたが、アウトラインもいずれ自分で作れるようになりましょう。
ちなみに、グループでブレーンストーミングをして出てきたメモには次のようなものがありました。
コンビニ弁当に付いてくる 溝に沿って割る 箸の持ち方は気になる
ただでもらえる 割る方向は縦 間伐材を使用 百円均一の店で売っている
1膳、2膳…… マイ箸が流行った うまく割れない 鉛筆の持ち方
麺類 滑らない 突き刺すのはマナー違反 竹、柳、杉など 使い捨て 紙の袋
利き手で2本を一緒に 共用× 「おてもと」 安い食べ物屋 バーベキュー
こういったメモを条件6のアウトラインに沿って並べて書くとよいのです。